よくある質問「ライブラリに無い部品」事例別紹介

利用者が増える限り、必ず、そして永遠に来る質問です

最近、色々な分野、年代の方がKiCadに挑戦して頂いているようで、本ブログにもさまざまな問い合わせを頂くようになってきました。

中でも、おそらく学生さんのプロジェクト活動で使ってみようという方からの問い合わせが増えてきていて筆者としてもうれしい限りです。

引用先リンク:東京工科大学「プロジェクトR」

こういった学生さんからの問い合わせで非常に多いのが

「KiCadのライブラリに無い○○な部品」

をどうすれば使えるようになりますか?という内容なので、今回はいくつかのパターンについて、これまでの記事も紹介しながら対処方法をご紹介しましょう。

事例1:「データシートしかない部品」

多いのが「部品の寸法を示した図面又はデータシートしかない」というケースです。

モノ作りに挑戦し始めたばかりの学生さんだと、電子部品の検索先が「秋月電子通商」さんだけだった場合、入手できる情報はデータシートのPDFしかない、ということも多いでしょう。

データシートにピン配置と寸法込みのフットプリント図面が記述されている場合は、ご自身でライブラリにデータを新規作成して追加できます。以下の2項目について、これまでのブログ記事も参考にして頂きながらシンボル及びフットプリント、必要であれば3Dデータも追加して回路作図やプリント基板作成に活用して下さい。

追加作業1「回路図シンボルのライブラリへの追加」

追加作業2「フットプリントのライブラリへの追加」

※ どちらも追加ファイル用に「新規ライブラリ」を作成してから作業する必要がありますので注意して下さい。

<参考記事>

「シンボルエディターを使ってみよう(Ver.8版)」

「フットプリントエディターを使ってみよう(Ver.8版)」

事例2:「現物しかない部品」

諸事情で使用している部品の仕様は分かっているけれど、データシートや寸法図等が存在しない電子機器を使いたい、というケースがあります。

また、大学や機関等で「研究段階の試作品を基板上に実装したい」ということも多々あります。

回路図に組み込む場合のシンボルは先の事例1で紹介した記事を参考に同様の作業で対処できますが、フットプリントについては一工夫必要です。

もちろん、フットプリントエディターでゼロから作図しても問題ないのですが、他のCADで機械的な設計が終わっていたり、採寸から2D-CADなどでの作図が行える場合、そのデータを活用してフットプリントの作図作業をより楽に進められます。

実際に実物しかない部品の場合、まず採寸した形状を2D-CADで作図して下さい。その作図データを「DXFファイル」で保存(エクスポート)します。

下図のような試作回路を部品として利用したい場合も同様です

次に、フットプリントエディターで「新規ライブラリ」を作成し、編集画面が空の状態を用意します。

「ファイル」-「インポート」-「グラフィックス」の順に選択し、先ほど保存したDXFデータを読み込みます。読み込む際はいきなり外形や導体層のレイヤーに読み込むのではなく「User.1」等のユーザーレイヤーに参考図として読み込むようにした方が後の編集が楽になります。

読み込まれた図を元にしながら、フットプリントを作図しましょう。

Userレイヤーは標準状態では、PCBエディター上で設計した基板の製造には使用しないレイヤーなので、下絵として読み込んだDXFデータはそのままにしておいても問題ありません。

事例3:「調べ方を工夫すればデータが入手できる部品」

最も多いパターンが「少し調べ方を変えればKiCadに使用できるデータが見つかる」ケースです。

例えば学生さんのコンテストなどでよく使われる「汎用リレー」等は、学校に在庫がある場合や電気街で買って来たジャンク品から取り出したものを使いたい、ということがあります。

「いや、ちゃんとしたもの買いなさいよ」と、思わずツッコみたくなる気持ちをぐっと抑えて話を進めていきましょう。

部品に書かれているメーカー名や型番を一生懸命調べて検索をかけたら「製造中止品です」とメーカーや販売サイトのWEBページで表示されても諦めないで下さい。

製造中止の時期がそこまで古くなければ、世界規模で展開している電子部品の通信販売サイトで検索すればデータが入手できる場合があります。

汎用リレーの例として「OMRON製 型式G8PE-1C4」を検索してみます。検索結果からメーカーサイトやAmazonではなく、通信販売業者の「Mouser Electronics」のリンクをクリックしてWEBページを開きます。

開かれたページから「ECADモデル」の項目にあるリンクをクリックすると、製造中止品でもKiCadに使用できるシンボルやフットプリントがダウンロードできる場合があります。

また、コネクタで有名なTE CONNECTIVITYなどは、メーカーの商品情報ページから、先ほどのMouser同様にECADデータが入手できるようになっています。

TE Japan合同会社が国内拠点として問い合わせ窓口を持っていますので安心して利用できます。

例1:TE Connectivity 型番1318772-2

例2:TE Connectivity 型番173858-1

ダウンロードしたECADデータは、シンボルエディター、フットプリントエディターを経由してお使いのKiCad内ライブラリに追加して活用して下さい。

以下の記事も是非参考にして頂ければと思います。

<参考記事>

「KiCadのライブラリを拡充する」

一昔前は「初めて挑戦するモノ作りでプリント基板の設計までやる」なんて、無茶でしかありませんでした。現在はKiCadをはじめとしたさまざまなEDA、CADやWEBのサービスが充実してそのハードルは大きく下がっていると思います。

是非いろいろな情報を集めながら、思い描いたモノ作りを達成できるように頑張って欲しいと思います。

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ABOUT US
KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。