Arduino用シールド基板を作る

マイコンボード「Arduino」で利用する基板を作る

今回は設計の実例として、マイコンボード「Arduino」用シールド基板を設計してみたいと思います。

マイコンボード「Arduino」は電子工作やちょっとした組込機器の開発にも使用できるオープンソースのマイコンシリーズです。現在では多機能、高性能化が進んだモデルが各種販売されていますが、初期のAVRマイコンを搭載した、動くことを優先したようなモデルについても現在もなお利用されています。

このマイコンボードの上に、ソケット連結する形で色々な回路を追加する基板は「シールド」と呼ばれ、目的に応じたさまざまな種類のシールドが製品化されています。

また、Arduinoそのものがオープンソース化されていることもあり、シールド基板を自作するケースも非常に多いです。

KiCadのテンプレートを利用して回路図を描く

KiCadのプロジェクト作成時、テンプレートから選択されるマイコンボード各種も、このシールド基板を設計することを想定したテンプレートとして用意されています。

今回は標準的な「UNO」タイプのArduinoに、各種IOをコネクタ接続で取り出せるようなシールド基板を設計してみます。

コネクタ接続には、ホビーユースで広く普及している「QIコネクタ」の3ピン構成を基準に考えます。

ラジオコントロール機器の規格では、QIコネクタと互換性のある3ピンコネクタに、信号線、電源、GNDの順番に配線が接続できるように定められています。20年程前のホビーロボットブームでラジコン用サーボモーターをマイコンに接続して動かすスタイルが一気に広まり、今では電子工作の基準と言っても良いくらいに普及しているスタイルです。

このコネクタでデジタルピン、アナログピン共に配線できるシールドを考えます。

まずマイコンボードのVinピンに電源を供給できるよう、シールド側に端子台を用意して外部電源を供給できるようにします。

あわせて、デジタルピン側の電源ラインは端子台からの供給電圧か、マイコンを経由した後の5V給電か、いずれかを選択できるようにしたいと思います。

アナログポート側も5Vと3.3Vを選択できるようにした方が良いと思いましたが、今回は5V給電のみで進めます。

コネクタを取り付けるピンヘッダーは、デジタルピン、アナログピン共に半田付け作業のしやすさを考慮して3×4のブロックタイプを基本として選定します。ピン数の都合上一部余剰ピンが発生しますが、今回は未使用ピンとしてそのまま使用します。

KiCadのシンボルでは「3×4のピンヘッダー」を示したシンボルがありませんので、今回は汎用コネクタの4ピンのシンボルを3つで1組として回路図を描いていきます。

他には端子台の受電部にノイズ対策用のコンデンサが追加できるようにするのと、念のため逆流防止用のダイオードを追加します。

今回は回路のボリュームも多くはないので、標準設定のA4横サイズのシート内で描き切れています。

回路図を描き終えたらアノテーションを実施してフットプリントの割り当てを進めます。

フットプリントの割り当てについてですが、回路図を描くとき、最初にシンボルを読み込んだらすぐにプロパティを開き、先にフットプリントを割り当ててしまう方法もあります。

この場合、シンボルをサブメニューから複製(WindowsのCtrl+C&Ctrl+Vでも可)すると、フットプリントの情報も一緒にコピーされます。

ちょっとした小技ですが、同じパーツを多数配置する時は作業効率が上がるので活用してみて下さい。

PCBエディターでレイアウト設計を行う

回路図が描き終わったら、PCBエディターに切り替えて「回路図から基板を更新」アイコンをクリックまたはキーボードのF8キーを押して更新処理を実施します。

今回はテンプレートからファイルを作成しているので、PCBエディターのファイルにはArduinoマイコンボードの外形とコネクタがあらかじめ配置された状態になっています。

更新処理を実施し、読み込まれたフットプリントを外形内にレイアウトしていくアートワーク作業に入ります。

今回使用するピンヘッダーは3×4のひとかたまりなのに対して、フットプリントは4ピンコネクタが3つで構成されています。正常に半田付けできるように、編集画面右上のグリッド選択ウインドウから2.54mmを選択して3つのコネクタを2.54mmピッチで並べて配置します。

この時、コートヤードやシルクスクリーンが重なりあうためにエラー表示が出たり、デザインルールチェックで警告コメントが表示されることがあります。

今回は半田付け作業用のプリント基板のみを作る前提ですので、これらのエラーは無視できるものと判断してそのまま先に進めます。

製造データ用の情報を準備する

プリント基板製造を外注する場合に基板サイズが必要になります。ユーザーレイヤーなどに全長、全幅等を計測した寸法線を記入しておきましょう。

3Dビューワー等も利用して、外観確認なども行うと良いでしょう。

必要な編集が完了したら、プロットコマンドでガーバーデータとドリルデータを出力します。表面実装等の実装作業を行わないのであれば、位置情報データ(ポジションデータ)の作成は不要です。

プラグインでワンクリック発注も可能、だけど・・・

PCBエディターに基板製造業者のプラグインがインストールされていれば、ガーバーなどの出力処理を省略して、ワンクリックでWEBサイト上に見積を表示することが可能です。

但し、後で手直しが発生したり、他社との比較検討を行うといった場合には製造用ガーバーデータが必要となるので、筆者としてはできればプロットコマンドでデータ作成、見積依頼というワンクッション置いた手順で作業することをお勧めします。

基板製造サービスにデータを送信し、見積金額、納期も確認できたら後は必要な支払手順を実行して基板が到着するのを待つだけになります。

フリーウェアEDAの普及とインターネットビジネスの普及で、プリント基板の設計、試作は個人でも簡単に行えるようになりました。是非皆さんも、色々な制御回路を設計して試作をしてみて下さい。

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ABOUT US
KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。