よくある質問「旧バージョンのデータ活用」

今回は旧バージョンで作成されたKiCadデータの活用例を1つご紹介します。

旧バージョンのプロジェクトファイルからライブラリを生成する

KiCadはフリーウェアのEDAとして広く利用されていますが、バージョンアップに伴いシンボル、フットプリントのライブラリも都度更新が行われています。

これらのライブラリデータは、基本的にはメーカーからの最新情報に基づいて更新、修整が行われるのですが、ときどき「旧バージョンのシンボルやフットプリントの方が使い勝手が良かった」ということがあります。また、以前はベンダー提供のライブラリを使用して作成した回路図を流用して新規設計を行う際に、せっかくなので見やすいシンボルに編集したい、と思うこともあります。

本記事では、そんな時に旧バージョンの各エディターファイルから、編集可能なライブラリを作成する方法を説明します。

旧バージョンのプロジェクトファイルを開く

まず使用したいシンボル、フットプリントが存在する旧バージョンのプロジェクトファイルを開きます。

画像の回路はArduino互換マイコンボードの回路図になります。簡易実験や工作教室等に利用するボードをこの回路で沢山作ってきましたが、最新の情報を基にそろそろ再設計が必要かな?と考えています。

最初に、この回路図に描かれているシンボルファイルをエクスポートしてみましょう。

プロジェクトファイルは最新バージョンに更新しなくても大丈夫

回路図エディターを開くと、「このファイルは古いバージョンのKiCadで~」というメッセージが表示されますが、指示に従って保存アイコンを押す必要はありません。

ここで「ファイル」-「エクスポート」-「シンボルから**ライブラリへ」の順にクリックします。

既に追加・編集専用のライブラリをPCに登録しており、そこに今回のシンボルデータを追加したい場合は「シンボルからライブラリへ」を選択します。開いたプロジェクトファイルのデータで新しいライブラリを作成したい場合は「シンボルから新しいライブラリへ」を選択してください。

「シンボルからライブラリへ」を選択した場合はエクスポート先のライブラリを選択する画面が表示されます。

ここでもインストール時に標準設定で登録されたライブラリは上書きできません。現在のバージョンでは「シンボルライブラリを選択」の画面で上書き可能なライブラリしか選択できないようになっていますので、ご自身で新規に用意したライブラリ名の中から選択して下さい。

「シンボルから新しいライブラリへ」を選択した場合は、ライブラリテーブルの範囲を選択した後に新規ライブラリファイルの保存先を決定して保存します。

エクスポートを終えたシンボルのライブラリは、保存と同時にお使いのKiCad環境に登録されています。シンボルエディターからライブラリを指定してシンボルの読み込み、編集が行えるようになっています。

PCBエディターも基本は同じ操作

PCBエディターについても同様に、ファイルを開いた後で「ファイル」-「エクスポート」-「フットプリントを**ライブラリにエクスポート」の順で操作してフットプリントライブラリを作成します。

フットプリントについては特に、旧バージョンからの設計資産を活用したい方も多いかと思います。

標準ライブラリにはデータが存在せずオリジナルのフットプリントを作成して使用して来た、そのデータを継続して使いたい場合で、更にライブラリファイルがそのまま新バージョンへの追加に対応できないといった時には、今回の操作が有効に活用できると思います。

簡単に操作できてしまうので「上書き」に注意!

なお、既に新規データ追加用のライブラリを登録していて、そこに旧バージョンのデータからエクスポートする場合には一つ注意点があります。

ライブラリにエクスポートする際、シンボル、フットプリント共にプロパティ内に登録されている情報を元にして、エクスポートされるデータ名は自動で登録されます。

もし既存のライブラリ内に「同じ名前のシンボル/フットプリントが存在した場合」、強制的に上書きされてしまいます。エクスポートする前に、別に作成していたデータがあった場合は、置き換えられてしまい復旧できなくなりますのでご注意ください。

以上のように注意する点はありますが、旧バージョンの資産を上手に活用して、継続して回路設計やアートワークに取り組むことが可能になります。

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ABOUT US
KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。