プリント基板(PCB)の設計が一通り完了したら、次にやる手順は、実際に基板を製造するための「製造用データ」を生成することになります。
この製造用データには、各種レイヤー情報を記録した「ガーバーファイル(Gerber)」や、「ドリルファイル」が含まれます。これらのファイルは、基板製造業者に提出するために欠かせない重要なデータです。
今回は、KiCadを使ったガーバーデータ出力の手順について解説します。
ガーバーファイルとは?
「ガーバーファイル(拡張子:.gbr)」は、プリント基板の各レイヤー(銅箔パターン、シルク印刷、はんだマスクなど)を個別に表現したデータファイルです。
基板製造業者は、これらのガーバーファイルとドリルファイルをもとにすることで、設計データ通りのPCBの製造できます。
ガーバーデータ出力の流れ
① ガーバープロットダイアログを開く
- KiCadのPCBエディターを開きます。
- メニューから
ファイル
→製造用出力
→ガーバー (.gbr)
をクリック。 - 「プロットメニュー」ダイアログが表示されます。

② 出力先ディレクトリを指定する
ガーバーファイルはレイヤーごとに個別のファイルとして生成されるため、ファイル数が多くなる点に注意が必要です。

- 推奨:プロジェクトフォルダ内に「Gerber」などの専用フォルダを新規作成し、その中を出力先に指定するようにしましょう。
(例:MyProject/Gerber
)
③ 出力形式を「Gerber」に設定
基板製造時のデータ出力形式は必ず「Gerber」を選択してください。PDFやDXFなど他形式も選べますが、製造に使用するのは基本的にGerber形式のみです。

④ 含めるレイヤーを選択
基本的に以下のレイヤーは製造に必須になります
- 導体層(*.Cu):配線パターン
- 基板外形(Edge.Cuts):基板の輪郭
- はんだマスク(*.Mask):はんだを塗布する部分の保護
- シルクスクリーン(*.Silkscreen):部品番号などの印刷
- ペースト層(*.Paste):ステンシル(はんだペースト用マスク)用
- 接着層(*.Adhesive):部品を接着する際に使用(必要に応じて)
🔍 補足
.Cu
はF.Cu(表面)とB.Cu(裏面)の2つが一般的です。.Silkscreen
は表面(F.SilkS)と裏面(B.SilkS)があります。
多層基板を設計した場合は内側の導体層もチェックを入れるのを忘れないようにしましょう。
それ以外も必要に応じて、以下のような特殊レイヤーも出力対象に含めることがあります。
- fab層(*.Fab):機械加工や組み立てガイドなどの記載がある場合
- ユーザー定義レイヤー(*.Eco1, *.Eco2など):Vカット指示や特殊情報を記載する場合
⑤ その他のプロットオプション
「ガーバーオプション」の設定を確認しましょう。一般的には以下の項目にチェックを入れます

- ✅ ガーバージョブファイルを生成
- ✅ 拡張X2フォーマットを使用
- ✅ ネットリスト属性を含む
- ✅ ハンダマスクがない部分のシルク印刷を除去(できれば推奨)
⚠️ これらのオプションがすべてオフになっている場合、正しいGerberデータが生成されない可能性がありますので注意しましょう。
⑥ ガーバーファイルを出力する
設定が完了したら、「プロット」ボタンをクリックして、ガーバーデータの生成を実行します。

⑦ ドリルファイルを生成する
ガーバーデータに続いて、「ドリルファイル」の生成も必要です。このファイルには、基板に空けるビアやスルーホールの位置・サイズが記録されます。
- 「ドリルファイルを生成…」ボタンをクリック
- 新しく開かれたダイアログで「生成」をクリック
- ガーバーと同じ出力先に保存すればOK

出力が完了したら?
ガーバーファイルとドリルファイルが出力されたら、製造業者に提出する準備は完了です。
💡 最後のチェックポイント:
- 出力ファイル数は10~20個程度と、多めになるのが一般的
- 各レイヤー名が正しく出力されているか確認(例:F.Cu.gbr、Edge.Cuts.gbr)
- データ確認用にGerber Viewerなどで表示テストしておくと安心
まとめ:KiCadでの製造用データ出力は難しくない!
KiCadでのガーバー出力は一見難しそうに感じるかもしれませんが、手順をしっかり覚えておけばシンプルな作業です。
- レイヤーの選択を正しく行う
- 出力オプションを忘れずにチェック
- ガーバーとドリルファイルを一緒に保存
この3つを意識すれば、問題なく製造に出せるデータが作成できます。