プリント基板(PCB)の設計がある程度進んできたら、「実際にどんな外観になるのか見てみたい」と思うことはありませんか?
KiCadには、そんなニーズに応える便利な機能「3Dビューアー」が搭載されています。基板の完成イメージを画面上で立体的に確認できるだけでなく、設計の資料づくりやプレゼンにも役立つ画像データを手軽に生成することができます。

3Dビューアーって何ができるの?
KiCadの3Dビューアーは、PCBエディターで設計した基板を立体的に視覚化するための機能です。
2Dのレイアウトでは見えにくい部品の高さや配置のバランス、裏面部品の位置関係などを、リアルな3Dモデルとして確認することができます。

主な活用シーン:
- 部品配置の最終確認
- 高さや干渉のチェック
- 資料や発表資料用の基板画像の作成
- 顧客やチームとのレビュー用イメージ作成
注意点:3Dビューアーは「外観確認」に特化した機能のため、精密な3Dデータが必要な場合は、エクスポート機能を使って外部CAD用の3Dファイルを生成しましょう。
3Dビューアーの起動方法と操作方法
KiCadのPCBエディターから以下の手順で3Dビューアーを起動できます:
- メニューから「表示」→「3Dビューアー」を選択
- または、ツールバーの3Dアイコンをクリック

基本的な操作方法:
- 左ボタンドラッグ:モデルの回転
- 中ボタンドラッグ:画面の平行移動
- マウスホイール:ズームイン/ズームアウト
直感的な操作ができるため、初心者の方でも直感的に表示のアングルを変更できるようになります。
レイトレーシングモードでリアルなレンダリングを!
よりリアルな画像を生成したいときには、「レイトレーシングモード」を使ってみましょう。
光の反射や影の描写を加えた美しいCGを出力できるため、資料作成にも効果的です。
レイトレーシングの設定方法:
- 3Dビューアー内のメニューから「設定」→「レイトレーシング」
- 有効化すると自動的に描画が高品質になります

ただし、リアルな描画を行う分、PCへの負荷は大きくなり、描画速度も遅くなるため、必要なときにだけ切り替えるのが良いでしょう。

表示レイヤーのカスタマイズも可能(KiCad Ver.9以降)
KiCad Ver.9の3Dビューアーでは、右側の「外観」セクションから各レイヤーの表示/非表示を切り替えられます。

これにより、以下のような使い分けが可能になります:
- 部品だけ表示:発注資料や仕様確認に便利
- 基板パターンのみ表示:製造チェック用途に
- 裏面だけ表示:両面実装のチェックに
表示項目を必要なものだけに絞ることで、より効果的な資料作成が可能です。
3Dモデルはフットプリントに紐付けされている
KiCadの多くのフットプリント(部品の実装形状)には、あらかじめ3Dモデルが紐付けられています。
そのため、対応している部品を使えば、特に何もしなくても3Dビューアーで部品の外観を見ることができます。
ただし、すべてのフットプリントに3Dモデルが含まれているわけではないため、部品によっては3D表示されないこともあります。
そんな時は手動で3Dモデルを紐付けましょう:
- PCBエディターで該当フットプリントを右クリック
- 「フットプリントのプロパティ」を開く
- 「3Dモデル」タブから対応する3Dデータを追加

STEPファイルなどの外部モデルも利用できるため、手元の3D-CADデータを活用するのもおすすめです。
独自の3Dデータでよりリアルな表示も!
自作の部品や特殊な形状を再現したい場合は、独自の3Dモデルを作成してKiCadに取り込むことも可能です。
例えば:
- 3D-CAD(Fusion 360、FreeCADなど)で部品の形状を作成
- STEP形式で出力
- KiCadのフットプリントに3Dデータを紐付け
これにより、市販されていないパーツや独自仕様のモジュールでも、リアルな完成イメージを作成できるようになります。
まとめ:3Dビューアーを活用して設計を「見える化」しよう!
KiCadの3Dビューアーは、単なる確認ツールにとどまらず、設計の質を高め、チーム内外とのコミュニケーションにも役立つ機能です。
- 部品配置の確認
- 設計ミスの予防
- 提案書・資料用の画像生成
- カスタム部品の可視化
こうした用途で各種チェック機能と併せて3Dビューアーも活用し、より完成度の高い基板設計を目指しましょう!