今回は、フットプリントエディターを使って独自にPCB設計用のフットプリントを作図、追加していく手順について解説します。
電子部品の「フットプリント」とは?
「フットプリント」とはその名の通り「電子部品の足跡」を意味しています。
特定の形状をした電子部品をPWBの表面に取り付けるために、半田付けを行う端子の形状とそのレイアウトをまとめた図形を指します。
銅箔の接続端子単体の場合は「ランド(land)」や「パッド(pad)」とも呼ばれます。
過去に別記事でも触れていますが、電子部品のフットプリントは実に多様な形状をしています。
KiCadの標準ライブラリには国際規格で定められたフットプリントを中心に、豊富なデータがあらかじめ用意されており、さらに様々なWEBサービスを利用してフットプリントのデータの追加もできます。
しかり、専用部品を使用する必要がある場合や、開発途中の治具基板を部品に見立てて使いたいといった場合には、独自にフットプリントを描いてデータを登録する作業が必要になります。
実例:Bluetoothモジュールのフットプリントを作図する
今回はBluetoothモジュールを例に挙げ、実際にフットプリントを作図しながら操作方法を解説していきます。
今回サンプルとして、秋月電子で販売している
「ブートローダー書込済Bluetoothモジュール MDBT50Q-1MV2」
を使用します。下記は販売ページURLです。
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g117928
内蔵されている32bit ARM CPUにブートローダが書き込み済みなので、ArduinoIDEでのプログラム開発が可能なモジュールです。
別途シンボルデータも用意する必要がありますが、今回はフットプリントについてのみ進めて行きます。
販売ページからデータシートを入手し、パッドの配置と寸法図を確認します。
信号線(パッド)の数に一瞬たじろぎますが、データシートをよく見ると、このBluetoothモジュールの場合パッドの寸法がすべて同じことに気づきます。
これなら簡単にデータ作成できそうです。早速フットプリントエディターを起動して作図を始めましょう。
フットプリントエディターを使う
KiCadのフットプリントエディターは、管理画面からICを模したアイコンをクリックして起動します。
起動する際にインストール済のライブラリを読み込む作業に少し時間がかかる場合がありますので、しばらく待ちます。
このとき、何度起動しても「ライブラリの読み込みに失敗しました」というメッセージが出る場合があります。その場合はインストール時かその後に何らかの理由でフットプリントのライブラリファイルが一部欠損している可能性がありますので、公式サイトからライブラリファイルをダウンロードして上書き、追加する等で対応して下さい。
新規にフットプリントを作図するので、シンボルエディターと同様に新規のフットプリントファイルを保存するためのライブラリーを登録する必要があります。
追懐したライブラリーが選択されている状態で、メニューバーから「ファイル」-「新規フットプリント」の順にクリックするか、アイコングループの一番左端のアイコンをクリックして下さい。
新規フットプリントの名称を入力するウィンドウが開きますので、部品の名称を入力し、フットプリントのタイプを選択してOKボタンを押します。
フットプリントのタイプは表面実装(SMD)か半田付け基板(スルーホール)かを選択できます。編集中のパッドの標準設定を決める項目で、あとで変更も可能ですが、混乱を避けるためにもこの時点で正しく選択しておくようにしましょう。この時点までにフットプリントのタイプをデータシートで確認しておきます。
フットプリント名は、今回のBluetoothモジュールなどの特殊形状の部品の場合はその部品の型番を、互換性のあるピン配置や形状をしている場合はそのパッケージの規格名を登録するのが一般的です。
名称の入力が終わると、中央の編集画面に登録した名称と、部品番号になるリファレンスラベルが表示されます。
文字やシンボル、図形の移動は対象の上までカーソルを移動させて右クリックで開くメニューから行います。
部品名称やリファレンスを中央に配置したままでは作業しづらいので、上下に移動させて編集するスペースを確保してから銅箔の接続部分「パッド」を配置します。
今回はデータシートにあるパッドの位置情報を活かしたいので、原点位置(0,0)を左下に置き、右上の空間にフットプリントを描画していきます。
まずモジュールの外形をシルクスクリーンレイヤーに描画します。
データシートからモジュールの外形寸法は縦15.5mm、幅10.5mmとなっているので、レイヤーに「F.Silkscreen」を選択、図形メニューの「矩形を描く」アイコンをアクティブにして、原点を起点に任意の図形を描きます。
この時点でグリッド間隔などを設定し、最初からぴったり寸法を合わせて描いても良いですが、このあとプロパティを開いて微調整も可能なので、最初は大雑把でも大丈夫です。
なお、プロパティ上に表示される始点、終点の位置関係については、描画時にどこの角から始めても必ず左上が始点、右下が終点となりますので注意しましょう。
また、原点に対してY軸方向は下がプラス(+)、上がマイナス(-)なのでこちらも併せて覚えておいて下さい。
このプロパティ上で、先ほどデータシートで確認した寸法を入力して、外形ラインの形状を整えておきます。
ついでにGND塗りつぶし禁止エリアが指定されていますので、これを禁止エリアとして先に描いておきましょう。
作画メニューから「ルールエリアを追加」アイコンをクリック、設定したいレイヤーと項目を指定した後、線を繋いでいくように多角形または四角形を描いていきます。
ただし、この方法で描かれたエリアの線は寸法を指定してのサイズ変更ができません。
今回のように既にエリアが寸法で指示されている場合、プリント基板の製作に影響しない下絵用レイヤーに参考となる図形を描き、それをもとにルールエリアを指定する線を描く方が適切です。
描いた下絵に沿って、改めてルールエリアの線を描いていきます。通常は設定されたグリッド上でしかクリックできませんが、図形の角はグリッドよりも優先してカーソルがフィットするので、下絵の通りにエリアを描けます。
モジュール外形と塗りつぶし禁止エリアの設定ができたので、いよいよパッドを配置していきましょう。
パッド配置は寸法図の読解がカギ
作図メニュー右上のアイコン「パッドを追加」をクリックすると、まずピン番号「1」のパッドがカーソルにフィットした状態で表示されます。
とりあえずこのパッドを任意の場所に配置して、プロパティを開きます。
開いたプロパティでパッドの位置、パッドサイズ(0.4×0.6mm)を、データシートを見ながら入力します。
入力し終えたらパッドを複製します。
パッドのサブメニューから「コピー」-「貼付け」か、「複製」メニューを選択してパッドをコピーします。
ここでは「複製」メニューからの比較的簡単な手順について解説します。
データシートをみると、この列は0.8mmピッチで13個のパッドが並んでいます。
まず「複製」したパッドをぴったり同じ位置に重ねます。
次に、重ねる操作後そのまま右クリックしてサブメニューを表示し「位置決めツール」-「数値を指定して移動」を選択します。
ここでは右にずらしたいだけなので、移動Xの項目にのみ0.8mmと入力します。
0.8mmピッチで2個目のパッドが配置されました。
この時点ではパッド番号が同じままなので落ち着かない人もいるかも知れませんが、ひとまずこの列のパッドを全部複製してしまいましょう。
他の列についても同様に複製から数値を指定して移動するか、パッドごとのプロパティから直接座標を入力する等の方法で配置して行きます。
全てのパッドが配置された状態になりました。ただし、この段階では全てのパッドのピン番号が「1」のままなので、再度データシートを見ながらそれぞれのピン番号を変更して行きます。
ピン番号の変更が終わったら、フットプリントデータの保存を忘れずに行いましょう。
必要であれば「フットプリントのプロパティ」メニューから、シンボルのプロパティ同様にデータシートのURL追加や、3Dデータの割り付けをあらかじめ行っておくこともできます。
必要な項目の追加を終えてファイルを保存すれば、PCBエディターでフットプリントを呼び出して利用可能になります。
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