KiCadで電子回路設計を行う際、「ライブラリ」と「ライブラリテーブル」の仕組みを理解しておくことは非常に重要です。今回は、シンボルライブラリとフットプリントライブラリの違いや、それらを管理するためのテーブルについて解説します。
シンボルとフットプリント、それぞれに専用のライブラリ形式がある
KiCadでは、次の2つのライブラリ形式が用意されています。

- シンボルライブラリ:回路図エディタで使用する記号(シンボル)のデータを格納
- フットプリントライブラリ:PCBエディタで使用する実装パターン(フットプリント)のデータを格納
これらは別々のファイル形式で管理され、それぞれに対応したライブラリテーブルに登録して使用します。
ライブラリテーブルとは?:グローバルとプロジェクトの違い
KiCadでは、以下の2種類のライブラリテーブルが存在します。
1. グローバルライブラリテーブル
- すべてのプロジェクトで共通して使えるライブラリの一覧
- KiCadをインストールした時点で、標準ライブラリが登録済み
- ユーザーが追加したライブラリを登録し、共通データとして活用可能
2. プロジェクトライブラリテーブル
- 特定のプロジェクトでのみ使用するライブラリの一覧
- プロジェクト固有の部品やフットプリントを管理するのに便利
- プロジェクトディレクトリに保存され、他のプロジェクトからは参照されない
通常はグローバルライブラリを使用して回路を描画、基板をレイアウト設計しますが、必要に応じてプロジェクト固有のライブラリテーブルも使い分けます。
ライブラリテーブルの表示と編集方法
それぞれのライブラリテーブルは、以下のようにして編集・表示できます。
- シンボルライブラリテーブル:
回路図エディタまたはシンボルエディタのメニュー「設定 → シンボルライブラリを管理…」

- フットプリントライブラリテーブル:
PCBエディタまたはフットプリントエディタのメニュー「設定 → フットプリントライブラリを管理…」

これらのテーブルは、プロジェクトマネージャーからも同様にアクセスすることができます。

パス置換変数でライブラリの柔軟な管理を
KiCadでは、多くのライブラリのパスがパス置換変数で定義されています。これにより、ライブラリの実体を別の場所に移動しても、変数の値を変更するだけで再設定できるため、大規模なパス修正作業を回避できます。

変数の編集は管理画面の「環境設定 → パスの設定…」から開くダイアログで実行できます。

知っていると便利なパス変数:${KIPRJMOD}
この変数は常に現在のプロジェクトディレクトリを指します。プロジェクトディレクトリ内にあるライブラリのパスを指定する際に役立ちます(グローバルライブラリでは使用しません)。
ライブラリテーブルの初期設定と再設定
KiCadを初回起動した際、シンボル・フットプリントのライブラリテーブルの初期設定を行うダイアログが一度だけ表示されます。このダイアログは通常のメニューからは再表示できません。
再度初期設定を行いたい場合は、該当するライブラリテーブルファイルを削除またはリネームする必要があります。ただし、削除前には必ずバックアップを取るようにしましょう。
OS別:ライブラリテーブルファイルの保存場所
OS | シンボルライブラリテーブル | フットプリントライブラリテーブル |
---|---|---|
Windows | %APPDATA%\kicad\9.0\sym-lib-table | %APPDATA%\kicad\9.0\fp-lib-table |
Linux | ~/.config/kicad/9.0/sym-lib-table | ~/.config/kicad/9.0/fp-lib-table |
macOS | ~/Library/Preferences/kicad/9.0/sym-lib-table | ~/Library/Preferences/kicad/9.0/fp-lib-table |
まとめ
KiCadで効率よく部品やフットプリントを管理するためには、ライブラリとライブラリテーブルの役割と構成を理解しておきましょう。
グローバル/プロジェクトの使い分けやパス変数の活用によって、柔軟で再利用性の高い設計環境構築が可能になります。
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