今回の記事では、KiCadの使い勝手を向上させるため、役立つデータのダウンロードについてご紹介します。
ほかの記事でも何度かご紹介していますが、回路図エディターやPCBエディターの機能追加においては、KiCad Ver.6シリーズより「プラグインとコンテンツマネージャー」から追加できるようになっています。
ここからは、公式サイトから入手できる各エディター用のライブラリーファイルについてお話していきます。
「サードベンダー提供のライブラリ」をKiCadに利用する
回路図エディターで回路設計をするためには、さまざまな電子部品の情報を現したシンボルファイルが必要になります。
また、PCBエディターでのプリント基板の設計においては、部品のレイアウトを決めるための形状データ=フットプリントが不可欠です。
KiCadの標準ライブラリーにおいても、あらかじめ多くのシンボルやフットプリントが用意されています。しかし、新製品の情報や用途に特化したパッケージへの対応など、世界中すべての部品を設計できるだけの情報は揃っていません。
これらを補うべく世界中で色々な情報がネット上で提供されていますが、提供されているシンボルやフットプリントは、実際と異なるものが配信されている場合などもあるため、配信元の信頼性については十分な注意が必要です。
その点、KiCad公式サイトでは、ライブラリーの提供元の中でも信頼性の高い各社が紹介されています。
KiCadをダウンロードしてセットアップする際、同時にこれらのサードパーティライブラリーもセットアップすることで、設計作業の効率アップにつながるためオススメです。
ライブラリの入手方法
ライブラリの入手手順については、サイトの案内に惑わされないように注意しましょう。
公式サイトトップページの上段メニューにある「DOWNLOAD」は、KiCadアプリケーション本体のダウンロードページにリンクしています。
こちらにはライブラリーのダウンロードページはないため、その左隣の「LIBRARIES」を左クリックします。
なお、サブメニュー内の「DOWNLOAD」からは、KiCad各バージョンの標準ライブラリーをダウンロードすることができます。ソフトウェアのバージョンアップとは別に時々更新されている場合があるため、数か月おきくらいのペースでチェックしてみるのもいいでしょう。
以下は、各メニューの簡単なご紹介です。
「LICENSE」には、著作権所有者に関する宣言が表記されています。
「CONTRIBUTE」には、ライブラリーにない部品の情報や、ライブラリー内の情報修正に関する手順や詳細が書かれています。
KiCadはフリーウェアとして提供を続けるため、GitLabを利用した不特定多数によるライブラリー管理が行われています。もしも使用中、シンボルの情報やフットプリントのパッケージ情報に誤りや修正、追加を要する情報を発見したときは、ここに記載されている手順にもとづき、内容更新のリクエストを送ることができます。
「LIBRARY CONVENTIONS」には、再配布を目的に作成するシンボル/フットプリントデータに対する作図のガイドラインが書かれています。
「THIRD PARTY LIBRARIES」を参照する
「LIBRARIES」内の一番下段「THIRD PARTY LIBRARIES」には、各社の提供するライブラリーへのリンクページが用意されています。
記事作成時点では、5社のライブラリー提供元について紹介がされています。
1つ目は、電子部品の販売をしている「Digi-Key」の提供ライブラリーが紹介されています。
ここでは、GitHubのリンク先からDigi-Keyの取り扱い部品に対応したシンボルライブラリおよび、フットプリントライブラリを入手することができます。
シンボルライブラリには、Digi-Keyへの発注のリンクやデータシートの情報が登録されているため、部品表からのスムーズにな発注ができるようになっています。
2つ目は、電子部品検索エンジンの「Octapart」が紹介されています。
こちらのサイトは、基本的に部品の販売情報に特化した検索エンジンとして、型名や名称などを入力すると、現在取り扱いのある販売業者や在庫状況などを確認することができます。
シンボルやフットプリントの情報は部品ごとにリンクが用意されており、ライブラリーの形式で一括提供されてはいないため注意しましょう。
3つ目は、マイコン周辺機器の「Sparkfun Electronics」が紹介されています。
同様にGitHubから入手出来るライブラリーには、基本的な電子部品と同社が扱っているLCDパネルや、セグメント表示器のシンボルやフットプリントの情報が用意されています。
4つ目の「SnapEDA」では、シンボル、フットプリントに加えて3Dデータも合わせたライブラリーの提供が行われています。
基本的に情報は無料開放ではありますが、利用登録した会員限定でダウンロードできる仕様となっています。
また、プリント基板のみを設計しているときはあまり気になりませんが、筐体内部への組み込みなどを意識した設計開発を行うときには、3Dデータも一元入手できる点については、割りあてミスなどを防ぐ目的としても大変ありがたい機能です。
最後は、設計用データの編集・販売を行っているソフトウェア企業である、「PCB Libraries」の情報提供について紹介されています。
一見すると無償で使えそうな説明が並んでいますが、ライブラリーの使用料を維持費として支払い続ける、ライセンス購入が発生するなどの注意点もあります。
とはいえ、業務でライブラリーのバージョン管理に忙殺されるような事態に遭遇している人にとって更新作業を任せられる点においては、十分安価な金額設定にはなっていると思います。
各ライブラリーの使い分けについては、「KiCadのライブラリーを強化したいけれど、完全無料の範囲でやりたい」という場合には、Digi-KeyとSparkfunのライブラリーを追加することで、かなりの情報を用意することができます。
また、「最新とまでは言わないけれど、現在流通している部品のデータはすぐ入手したい」という場合には、SnapEDAに会員登録してライブラリーを入手した後、必要に応じてOctopartにて都度データを追加していく方法もいいでしょう。
それでもデータが見つからない場合には、メーカーのデータシートを入手し、シンボル&フットプリントエディターでの自作にも挑戦してみましょう。
なお、ライセンスのガイドラインに適合していれば、自作したシンボルデータでリクエスト申請すると、次のKiCadバージョンの標準ライブラリーに自作のデータが採用されるという展開も起こり得ないとは言い切れませんよ。