KiCadのPCBエディターでGerberデータを生成する方法については別記事でご紹介しましたが、実際にプリント基板を製造・実装まで進めるためには、Gerberデータだけでは不十分です。
今回は、部品実装や検査に必要となる「Gerber以外の製造用ファイル」について、以下の3種類を紹介します。
✅ この記事で紹介する3つのデータ
- 部品配置ファイル(.pos)
- 部品表(BOM)
- 部品実装図(Assembly Drawing)
いずれもKiCadのPCBエディターから出力可能で、部品実装業者や検査工程で必須となるデータです。
① 部品配置ファイル(Position File / .pos)
部品実装を外注する場合に、部品ごとの配置座標や回転角などを記録したファイルが必要になります。これは .posファイルとして出力され、「ポジションファイル」とも呼ばれます。
▶ 出力手順(KiCad PCBエディター)
- メニューから
製造用出力
→部品配置ファイル
を選択 - ダイアログが開いたら、保存先を指定
部品配置ファイルを生成
ボタンをクリック

✅ おすすめのポイント
- Gerberと同様に専用フォルダに出力すると管理しやすくなります
- ダイアログ中央のオプションは基本的にデフォルトでOKですが、必要に応じて調整しましょう

② 部品表(BOMファイル)
❌ PCBエディターからの出力では不十分!
PCBエディターから出力できるBOMは、部品番号とフットプリント情報しか含まれていません。型番や仕様が含まれていないため、製造や発注に使うには不向きです。

✅ 推奨される方法:回路図エディターからの出力
▶ 手順
- 回路図エディターを開く
- メニューから
ツール
→部品表を生成
を選択 - 必要なプラグインを選び、CSVやXLSX形式で出力

📌 出力される情報の例
- シンボル名
- フットプリント名
- メーカー型番
- 実装要・不要などの属性
- 各種カスタムフィールド
このファイルを元に、Excelなどで編集して部品発注用BOMとして活用できます。

③ 部品実装図(Assembly Drawing)
部品が基板に実装された状態を示す図面や画像ファイルです。検査工程で特に必要とされる資料で、試作段階での検品チェック用資料として頻繁に求められます。
▶ 作成方法:PCBエディターの印刷機能を使用
- メニューから
ファイル
→印刷
を選択 - 「含めるレイヤー」設定で以下をチェック

✅ おすすめのレイヤー構成
Edge.Cuts
(基板外形)F.Silkscreen
またはB.Silkscreen
(部品シルク)F.Mask
またはB.Mask
(はんだマスク)

🔄 裏面を印刷する場合は「反転して印刷」にチェックを入れましょう。裏面から見た視点の実装図を作成できます。
🖼 実装図の補足
- シルク層に情報が十分あれば、3Dビューアからの画像エクスポートでも代用可能
- ただし印刷メニューを使用した線画のPDFを用意するとより精密な表示設定が可能で、業者への提出資料として適しています

✅ まとめ:Gerber以外にも用意すべきファイル
種類 | 主な用途 | 推奨出力元 |
---|---|---|
部品配置ファイル | 部品実装位置の情報 | PCBエディター |
部品表(BOM) | 部品の仕様・型番などの一覧 | 回路図エディター |
部品実装図 | 実装状態を示す図面、検査用 | PCBエディター(印刷) |
これら3種類のファイルに加え、Gerberデータも揃えることで、基板製造から実装、検査まで一括で業者に依頼することが可能になります。
📌 注意点
- 業者によっては、追加でドリルファイル、部品高さ情報などを求められる場合もあります
- 製造委託前に、事前に業者へ必要データを確認しておくことがトラブル防止につながります