先日リリースされたKiCad Ver.7.0.0の変更点について、リリース内容をもとに「全体編」および「回路図エディタ編」の2回にわけてご紹介していきます。
今回の記事では、「全体編」をお届けします。

多数の修正が行われた今回
まず最初に公式リリースのコメントにある
「この1年(=Ver.6)で6000件以上の反映」
「1200件以上の問題を修正」
という文面に驚きました。
以前にも触れましたが、やはりVer.6は何らかの事情があって無理やりリリースした未完成バージョンだったのではないか?という気がしてなりません。
それだけ開発が進んだ今回のVer.7には、期待と不安が半分半分な思いですが、修整以外ではどこが新しくなったのかという点について取り上げていきたいと思います。
図面中の文字入力が大幅進化
まず、「“カスタムフォント“対応」各エディタのテキスト入力にて、フォントの設定項目が大幅に増えました。
回路図エディタのテキスト入力ウィンドウで新旧を比較してみると、旧バージョンではKiCad専用フォント固定でしたが、Ver.7ではフォントを選択できるようになっています。


また、テキストサイズの変更のみならず、文字色の変更も可能、さらにテキストにURLを埋め込むこともできるようになりました。
部品のデータシートなどは、シンボルやフットプリントのプロパティに登録することを推奨していますが、設計された回路に使用する筐体や外部ケーブルアセンブリの情報、他回路プロジェクトと連動する管理サービスのURLを記入しておくなど、応用できる幅が大きく広がったと思います。

なお、“カスタム”フォントと聞いた時に「オリジナルのフォントが追加できるのでは?」と期待しましたが、現時点ではユーザー独自にフォントを追加する手法や可否については特にコメントされていません。
正直微妙・・・?3D入力デバイス対応
「3Dマウス」対応、3Dconnexion社の SpaceMouse に対応しました。
(メーカー日本法人URL:https://3dconnexion.com/jp/spacemouse/)
3Dマウスって何?という方が圧倒的に多いと思います。

3Dマウスとは、建築家、機構系エンジニア、デザイナー、CGアーティストといった3Dグラフィックスを扱うクリエイターや技術者向けに開発された入力デバイスです。
ゲーミングマウス等と比較し、コンピュータ上の3Dモデルを制御する為に最適化されたツールになっています。
その点では2D作業がほとんどのEDAに3D入力デバイスが必要なのか?と思うかもしれませんが、回路図エディタの階層図面切り替えや多段的なサブメニューの選択など、3D操作で重要視されている直感的な操作により、KiCadの編集作業効率を引き上げてくれる効果が期待できると言われています。

3Dマウスは慣れこそ必要ですが、狭い環境でも複雑な操作が簡単に行えるデバイスであるため、KiCadが公式に対応したことはもちろんいいことであるとは思います。
一方、搭載されている機能の数に直結してなかなかに高額なデバイスでもあるので、持っている人はそのままの使い勝手でKiCadが使えるようになりました、といったところでしょうか。
おそらくこれが一番本命の改良項目!「エラー情報提供機能実装」
「エラー監視」機能が実装されました。

これまではヘルプメニューにある「バグをレポート」から報告する方法でしたが、Ver.7ではSentryのエラー管理プラットフォームが実装されました。
これにより、操作中のKiCadが予期せぬエラーでクラッシュした場合、自動的にエラーの情報がKiCad開発チームに送信されてフィードバックに活用されます。
ユーザーとしては「なぜ今までなかった?」と言いたくなる機能であると思いますが、実際にこの機能を独自開発で実装するのは非常に高難度であるため、Sentryの登場によってついに実現できたということでしょう。
エラーでも情報の自動送信は行いたくない、という場合には、KiCad設定項目からSentryのレポート送信機能を切りかえることができます。


公式チームのコメントでは、
「Sentry の導入により、KiCad チームがユーザーの関与なしにクラッシュ ダンプを取得したいという長年の願望が解決されました。Sentry を使用することで、それを行うための非常に簡単なソリューションが提供され、KiCad をすべての人にとってより良いものにすることができます。」
とあります。
今回の機能実装により、トラブルやバグなどの正確な情報がより早く開発チームに届くようになります。特別な理由がない限りは、この機能はONにしてエラー送信可能な環境を維持し、ユーザーとしても微力ながら開発を応援したいものです。
全体的には、以上の項目以外には細かい使用感の調整を除いて、目に見える機能追加や変更はありませんでした。
また、回路図エディタ、プリント基板エディタなど各エディタについても、今回のバージョンアップでさまざまな機能の変更、追加が行われています。これらについては、次の記事内でご紹介していきます。
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