KiCAD Ver.7.0.2リリース

2023年4月16日に、公式サイトから「KiCAD Ver.7.0.2」がリリースされました。

今回は機能調整がメイン

全体的に細部の動作調整が主で、操作とデータ間に矛盾が生じるケースなどの調整が行われています。

本記事ではKiCADのソースコードを編集するレベルでの内容の紹介は割愛させて頂き、EDAツールとして操作する範囲で特に気になった変更点のみご紹介します。

各バージョンアップ内容の詳細については公式サイトのリリースノートをご覧ください。

古いバージョンファイルの扱いに調整が入りました

全体項目の修正点として最初に目についたのは「プロジェクトファイルの後方ロックアウト追加」です。

KiCADの古いバージョン、Ver.4や初期のVer.5等で作成されたプロジェクトファイルは、最新バージョンとファイル構成が異なることがあり、本来であればそのまま開くことはできません。Ver.6シリーズで生じたバグにより、読み込み処理が実行できてしまう上にプロジェクトファイルをユーザーに警告することなく新バージョンの構成に書き換えてしまうことで、設計資産となるプロジェクトファイルの情報が壊れたり、前のバージョンでも編集できなくなってしまうという問題が続いていました。

どうも前バージョンの開発チームは、この設計ファイル管理上で重大な問題をバグと認識していなかった様子があり、Ver.7リリース直後の時点でもこの問題が組み込まれたまま引き継がれてしまっていました。

今回のバージョンアップで機能の調整が行われ、下位バージョンの後方ロックアウトが働きプロジェクトファイル読み込み時に問題が発生しそうな旧バージョンのファイルは警告がこれまで以上に表示される様になります。

ラベル編集の調整が印象的な回路図エディター

回路図エディターも今回のバージョンアップでは動作の調整がメインとなっています。

目立った変更点としては、他EDAで作図された回路図データをインポートする際のエラー処理に修整が加えられています。各EDA間でファイルを読み込む際、そのデータには共通する項目以外にもそのソフトウェア専用に使用するファイル情報も一緒に記録されています。

読み込み時に不要となるファイル情報は基本的に読み込み時に無視されますが、今回はCADSTARのデータ読み込み時に処理できていない部分があったことに対応がなされたと明記されています。

もう一点「ネットラベルをグローバルラベルに変更するとクラッシュする」問題が修正されたことをご紹介します。

KiCADの場合、プリント基板エディター上で表示されるネット名の優先順位がシンボルのピン番号、グローバルラベル、ネットラベルの順になっています。

電源を示すシンボルは名称そのものがグローバルラベルと競合します。ネット名の表示はグローバルラベルの名称が優先されて表示が変わってしまい混乱の元にもなりますので、適切なラベルの使い分けが重要です。

この為、編集中にラベルの種類を変更する必要があります。

適切なラベル選択で分かりやすいネット名のまま作業を進めることができますが、この変更作業がトリガーになってファイルが強制終了する場合がありました。

今回この点に対して調整が行われ、クラッシュの発生頻度が大幅に低減されました。ただし、元々再現性の高い問題ではなかった(起きない人は全く起きない)点への修正なので、もうしばらくは様子を見たいと思います。

正直、筆者も講座を受けた方の環境では確認したことがあるのですが、自分が使っている環境下でこのクラッシュは起きたことがない上に、起こそうとしても再現できなかったので、何がトリガーになっているのかはもうしばらく調べてみたいと思います。

Spiceシミュレータは引き続き改良中

Spiceシミュレータは機能の更なる安定化が図られています。

パラメータ設定の調整や無効な値への処理等整理が進んでいますが、SPICEのヘビーユーザーからは「まだ不安定だ」という意見も多く、引き続き改良と機能強化が図られるそうです。

外部データ連携の不具合改善が進められたプリント基板エディター

プリント基板エディターは、旧バージョンのネットリストや他社EDAからボード情報をインポートする際に起きる不具合の対応を中心に機能の調整が行われました。

特にEagleやCADSTARからのファイルインポート時に起きる不具合について対策が施されました。

アートワークの機能が更に強化されたVer.7シリーズですが、それに伴い編集作業時の動作が不安定になる問題が発見され、今回のバージョンアップで各種修正が施されました。また、商用EDAへのエクスポート処理にも一部修整が加えられています。今回は「Specctra」の名前が挙げられ、書き出したデータの一部に不具合が生じる問題が修正されています。

滑り出しとして順調?なVer.7.0.2

今回のバージョンアップは機能追加など無く動作の調整に徹している印象でした。特に外部EDAのデータを読み込む際の動作・不具合の対応を急ぎ行っているようなバージョンアップ内容を見ると、世界中でEDAを使う人達の環境にまた変化が起きて来たのかな?と感じています。

新しいKiCAD Ver.7シリーズが、電子回路設計を通じたクリエイティブなモノ作りや最先端の研究開発への挑戦に役立つツールとして、皆さんに使って頂ければ1ユーザーとして嬉しいです。

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ABOUT US
KiCADの達人
KiCAD歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCADの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。