今回はKiCadの入手とインストール、初回の環境準備について、2024年最新版のVer.8シリーズをもとに解説していきます。
KiCad 最新バージョンの入手について
最初にKiCadの入手についてです。
KiCadは、これまでに多くの解説本や電子工作関係の付録DVDに収録されていたりすることで、比較的皆さんの目に触れる機会が多かったフリーウェアです。解説をまとめた冊子と一緒にソフトウェアも入手できる便利さから、こういったルートから入手される方も多いと思います。
ですが、残念ながら2024年初旬の時点で、出版物等に収録されているのは比較的新しい出版物でもVer.6シリーズ以前の古いものが多く、特にVer.5シリーズよりも古いKiCadはオンライン環境が必須になるなど動作に必要な環境が異なるため、これから電子回路設計を始めるぞ!という方は可能な限り最新バージョンのKiCadをWEBサイトから入手するようにして下さい。
公式WEBサイトからダウンロードする
インターネット経由で入手するためには、WEBブラウザで「kicad」と検索します。
大体の場合「KiCad EDA」が検索結果のトップに出てきますので、リンクをクリックしてWEBサイトに移動して下さい。

読み込んだWEBサイトの、画面上部中央にある「Download」と書かれている青いボタンをクリックします。

ダウンロード画面に切り替わりますので、使用するOSの種類を選択してください。
以前は世界中で使用されている様々なOS用のファイルのダウンロードできましたが、現在はWindows、MacOS、Linuxの3種類いずれかの選択になっています。
本ブログではWindowsのシンボルをクリックして進めますが、本記事をお読みいただいている皆様は、ご自身が使用されているPCのOS用のファイルを入手して下さい。
Windows版ファイルを選択してリンク先に移動すると、Windows 64Bit版対応のファイルがダウンロードできるサーバーの候補が表示されます。

基本的には「WorldWide」のGitHubか、欧州の「CERN(欧州原子核研究機構)」のサーバーを選択すれば確実にファイルダウンロードができると思います。

ダウンロードできる拠点は公式のGitHub、欧州のCERN以外にも中国、北米、オーストラリアのファイルサーバーが用意されています。
ファイル入手先は安全重視を推奨
日本からKiCadのファイルをダウンロードする場合、北米やオーストラリアからのダウンロードは若干不安定な場合がありますし、中国の各サーバーはまれにOSのファイヤウォールが反応することがあり、筆者としては推奨できません。
基本的には公式GitHubからの入手をお勧めします。
サーバーを選択してクリックすると自動的にダウンロードが始まります。本記事執筆時点での最新バージョンはVer8.0.2、Windows版で約1.1GBのファイルダウンロードが実行されますので、ダウンロード完了まで通信回線が途切れないように注意して下さい。

ダウンロード開始と同時に、開発チームへの寄付を呼び掛けるページも開きます。

最近は寄付を呼び掛けるだけではなく、寄付額に応じてグッズの提供なども始まっているようです。
今だと120ドル以上の寄付を行うとTシャツが届く様子なのですが、日本から申し込んでちゃんと届くのかは不明です。
・・・今度実際に届くか試してみましょうかね?
KiCadはこれまで通り無償で商用利用まで可能なフリーウェアEDAであることに変わりはありません。寄付の支払いも従来と変更もなく必須ではありませんが、今後の開発や安定運用を維持するために開発チームを応援可能な方は是非ご検討頂ければと思います。
KiCadをインストールしよう
ダウンロードが終わったら、保存されているインストーラーをダブルクリックしてインストールを実行します。


基本的には、インストーラーの指示通りに進めれば問題ないと思います。

インストールが完了すると、デスクトップにKiCadのアイコンが作成されます。


プログラムマネージャーの確認
アイコンをダブルクリックすると、管理画面になるプロジェクトマネージャーが開きます。ここからプロジェクトファイルを作成して設計を開始しますが、実際に回路設計を始める前に必要なライブラリがインストールできているか確認しましょう。

プロジェクトマネージャーのメニューから「設定」-「シンボルライブラリを管理」の順にクリックします。

回路図エディターで回路を描くときに使用する各種シンボルのデータがまとめられている、ライブラリの管理画面が開きます。

現時点では管理画面に各種ライブラリが読み込まれていること、管理画面内で特にエラーが発生していないことを確認すれば大丈夫です。
同様にPCBエディターに使用する「フットプリントライブラリ」も管理画面を開いて確認しておきます。

さらに同じ設定メニューの下段にある「設定」から、各エディターの初期設定を行えます。


この設定画面については、とりあえずは標準設定のままでほとんどの場合問題なく使用できると思います。
しかし、表示の設定を中心としてかなりの項目についてカスタマイズできるので、別の機会にこの表示設定だけでまとめたいと思います。
各ライブラリファイルを別途入手する場合
もし、各エディターでライブラリの確認を行った結果、正常に読み込みができていなかった場合は、手動でライブラリの追加を行う必要があります。
ライブラリの入手についてはインストーラーを入手した時と同じようにKiCad EDAのWEBサイトへ行きます。

WEBサイト上部メニューの右側に「LIBRARIES」のメニューがありますので、ここからサブメニュー「DOWNLOAD」をクリックしてリンク先のページへ移動します。

リンク先のページから更にGitHubのリンクをクリックすることで、Ver.8シリーズ用の各種ライブラリファイルがダウンロードできます。
現時点では
「回路図エディターのシンボルライブラリ」
「PCBエディターのフットプリントライブラリ」
「3Dモデルデータ」
「プロジェクトファイルのテンプレートファイル」
がダウンロードできます。
通常はKiCadのインストールと同時にインストールされるライブラリと同じ物ですが、破損や誤操作によるファイル消去等があった際は、リカバリー用としてリンク先の説明に従いダウンロードしてください。
旧バージョンのKiCadも公式サイトより入手可能
また、このダウンロードページからは旧バージョンのKiCadのインストールファイルも入手できます。
KiCadは基本的には上位互換になっていますが、各種ファイルは読み込み後、保存時に最新バージョンに更新されてしまいます。どうしても特定のバージョンに固定して使用したい場合、これらのページから旧バージョンを入手して使用可能になっています。

これは完全に非推奨ですが、筆者の作業用PCではKiCadのVer.6、7、8をそれぞれ残した状態でインストールして使用しています。
旧ファイルの編集や動作確認が主目的なのですが、ライブラリファイルに不具合が生じる恐れも無いとは言えないため、同様の運用をする方は特に注意して環境構築なさって下さい。
※ 標準ライブラリでも過信は禁物 ※
以前旧バージョンの解説記事でも同じことを書きましたが、各エディターのライブラリは電子部品の性能や形状を示した重要なファイルです。沢山のメーカや販売会社が便利なライブラリセットを公開しており、KiCadの標準ライブラリもこれらのデータをもとに作成されています。
ですが、初めて使用するライブラリからシンボルやフットプリントを利用する際はそのデータを鵜呑みにはせず、念のため使用する部品の仕様書(データシート)を一度は取り寄せ、部品のピン配置や形状といった仕様に相違が無いか確認する習慣をつけることをお勧めします。
特に2022年前後から現在に至る間に、半導体部品の仕様変更や急激な世代交代が進んでいるため、同じ型番でも細部が変更されているという事例が増えています。
これから回路設計を仕事にしようと考えている方は特に注意なさって下さい。
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