回路図エディターを使ってみよう(Ver.8版)

「回路図エディター」を使おう

今回はKiCadのツール「回路図エディター」の基本的な使用の流れをご紹介していきたい思います。

プリント基板(PCB)の設計に限らず、あらゆる電子機器を製作する最初の工程として「回路図」が描かれます。

この回路図を基にしてプリント基板、部品への配線、ケーブルハーネス等が設計され製品がつくられていきます。

回路図エディターの起動

KiCadを起動してプロジェクトマネージャー右側に並んでいるアイコンの一番上側にある、「回路図エディター」のアイコンをクリックして起動します。

新しく作成したプロジェクトの場合、何も描かれていない図面枠だけのファイルが自動で作成され、読み込まれます。

なお、それぞれのエディターを実行する際に自動で読み込まれる図面ファイル、PCBファイルはプロジェクト名と同じ名前の自動生成されたファイルのみです。

旧バージョンや試作用と生産用を分けて管理するといった目的に「名前を付けて保存」メニューから別の名前を付けた図面ファイル、PCBファイルをプロジェクト内に保存することもできます。

ただし、別名保存したファイルを編集する際は、プロジェクトマネージャー左側のウィンドウからそれぞれのファイルをダブルクリックして直接開く必要があります。

右側に並んでいるアイコンから起動したエディターで別名保存したファイルを開くことは、現時点ではできませんので注意しましょう。

回路図エディターを開いて描画されている図面枠内に設計する回路を描いていきますが、最初にこの図面枠の情報を確認して、必要に応じて編集しておきましょう。

回路図・ページ設定を確認する

まずメニューバーから「ファイル」-「ページ設定」の順にクリックしてページ設定ウィンドウを開きます。

ここでは用紙のサイズと向き、右下の表題欄に記述する情報などを入力できます。

KiCadの回路図エディターの場合、用紙サイズの標準設定はA4横が基本です。

ウィンドウ右側には作成日付やバージョン、各種コメントを記載する欄が並んでいますので、必要な情報を入力します。

現在のバージョンではコメント欄は全部で9つ入力できます。図面の表題欄にはコメント1からコメント4までが表示され、それ以降は非表示の情報として利用できます。

また、Ver.7以降のKiCadは日本語入力にも対応しているので、表記の自由度が高まりました。表示されるフォントについてはKiCadオリジナルが標準設定となっています、機種依存文字等は表示化けの原因となりますので注意して下さい。

ページ設定が終わったらもう一つ「回路図の設定」メニューも確認しておきましょう。

使いはじめのうちは、殆どの内容は標準設定のままで問題ありません。

但し「一般設定」の中の「フォーマット」欄については一度目を通しておいた方が良いでしょう。

特に注意、確認しておいた方が良い項目としてアノテーションの「シンボルユニットの表記方法」を挙げておきます。

独自に使用する分には標準のままはもちろん、ご自身の好みで選んで頂いて問題ありませんが、回路設計を請け負い業務で行う場合は、クライアント側の表記ルールに合わせることが求められます。

ここで決めたシンボルユニットの表記は、後工程の設計データや部品表にも影響します。ささいな項目と思えるシンボル表記ですが、請負設計の場合は、後工程でのトラブルを未然に防止するためにも必ず事前に表記ルールを確認して合わせることをお勧めします。

上記の各種設定が終わったら、いよいよ回路を図面枠に描いていきましょう。

回路記号「シンボル」を配置する

回路図を描く手順を簡単にまとめると

「回路記号を配置する」

「回路記号同士を配線で接続する」

「必要項目の追加、回路を整理する」

というステップで進められます。

では最初のステップ、回路記号を読み込んで図面枠内に配置してみましょう。

エディター画面右側に並んでいるアイコンの上部にある、回路記号マークのアイコンをクリックします。

クリックすると使用するシンボルを選択するウィンドウが開き、マウスのカーソルが通常の矢印状態の物から細い十字のマークに変わります。

ウィンドウの左上には検索用のキーワード入力欄、その下に現在読み込まれているライブラリが表示されています。右側には選択されたシンボルのプレビューが表示され、一番下の欄にはそのシンボルのプロパティを表示させられます。

ウィンドウ左上にある「フィルター」欄に検索したいキーワードを入力します。

例えばオペアンプを検索したい場合、フィルター欄に「amp」と入力すると即座にその文字がシンボル名に含まれる、あるいはプロパティ内にampという文字列があるシンボルの候補がフィルターされて下の欄に表示されます。

左中段、アイテム欄に表示される候補の名称をクリックすると、右側の欄に回路図エディターに読み込まれるシンボルのプレビューが表示されます。

また、下段のウィンドウにはパッケージサイズやデータシートのリンク先など、登録されているプロパティが表示されますので、これらの情報から使いたい電子部品を探します。見つかったらウィンドウ下の「OK」ボタンを押すか、ライブラリ中のシンボル名の上でダブルクリックして読み込むシンボルを決定します。

すると、カーソル先端に先ほど選択した回路記号のシンボルがフィットした状態でウィンドウが切り替わります。シンボルの周囲が薄い水色(標準設定時)で覆われている状態は、そのシンボルが選択されている事を示しています。

配置したい場所または(編集前なので)邪魔にならない任意の場所にシンボルを移動し、配置したい場所で一回クリックすると図面枠にシンボルが配置されます。

シンボルが配置されましたが、マウスのカーソルはシンボル追加モード(カーソルが十字)のままになっています。

このままもう一度左クリックすれば次のシンボルを追加するウィンドウを開けます。シンボル追加を終了したい場合は、画面右側の矢印アイコンをクリックするか、キーボードの「ESC」キーを押してシンボル追加モードを終了します。

また、配置済みのシンボルを再度選択してから右クリックを行うと、編集用のサブメニューを開くことができます。

サブメニューでは移動やシンボルの向きの変更、カスタマイズの為にシンボルエディターで直接編集を行う、別のシンボルと差し替える(変更&更新)等を行う事が可能です。これらの機能を使って、回路図に必要なシンボルを図面枠内に揃えていきます。

シンボルがある程度揃ったら「ワイヤーを追加」他のメニューを使ってシンボル間の配線を接続し、回路を構築していきます。

今回はワイヤー接続の手順については割愛させて頂きます。別記事で実際の回路図例を挙げながら紹介したいと思います。

シンボル等ライブラリを充実させよう

このように、回路図を描くときに重要になるのが電子回路記号を表した「シンボル」です。

KiCadに標準で登録されているライブラリ内のシンボルには、IEC規格の図版を基準とした電子部品が選定されています。

ですので、一般的な回路図であれば標準ライブラリに登録されている範囲の記号だけで描くことができます。しかし回路図エディターの活用方法は意外に広く、プリント基板を作るための回路はもちろん、ちょっとしたLEDを用いた手作りの工作物や、ケーブルのアセンブリ等を作るための配線図を描くなどにも利用できます。

そのような場合「標準ライブラリ該当するシンボルが無い」や「加工指示図に使いたいので実物に近い図が欲しい」といった要望が増えてきます。

シンボルエディターを利用して回路図用のシンボルを自作していく方法については別記事でも紹介しています。また、最新バージョンのKiCad対応の記事も改めて用意して説明したいと思います。

今回はこういった希望に対して有効活用できそうなライブラリ提供を行っているサービスを紹介しておきます。

ここでは一度にまとまった数の部品が一気にKiCadに追加できる、Digi-Keyが提供して

いるサービスについて解説します。

該当サービスのURLはこちらです。

Digi-KeyライブラリサービスURL

https://www.digikey.jp/ja/resources/design-tools/kicad

こちらのページから「KiCad LIBRARY」へのリンクをクリックして、Githubのページに移動してファイルをダウンロードします。

また、同ページでは旧バージョンな上に英語版ではありますが、Ver.5シリーズに対応した解説動画を視聴も可能です。

最新バージョンと比較するとかなりの箇所に違いが生じていますが、分かりやすく参考にするには充分な内容です。

ダウンロードしたファイルを解凍したら、シンボルエディター用、フットプリントエディター用のライブラリファイルがありますので、プロジェクトマネージャーのメニューか、それぞれのエディターの「ライブラリを管理」メニューから登録します。

サービス提供元のコメントによると、パーツの分類で300分類以上、部品点数で1000点を超えるシンボル、フットプリントが登録されているそうです。

シンボルエディターから追加する場合は「設定」-「シンボルライブラリを管理」の順にクリックし、管理画面の左下、ライブラリ追加のアイコンを押して該当するファイルを選択します。

フットプリントエディターも同様の手順で、管理画面からライブラリを追加します。

これでDigi-Keyが提供しているパーツライブラリが利用可能になりました。

Digi-Keyライブラリの特徴としては、

「コネクタ等の特殊形状の図形がシンボルに描かれている」

「発注に必要な注文番号などの情報がBOMに反映できる」

「フットプリントと割付済の部品が多い」

などが挙げられます。先ほども話題にしましたが、PCB設計の効率アップはもちろん、それ以上にケーブルアセンブリを作る配線図や、半田付け基板の上で組立を伴う回路試作を行うための資料として大いに役立つ回路図を作図できます。

ただし、一つ注意すべき点があります。

KiCad Ver.8シリーズになって各種ライブラリの表記が刷新されました。このDigi-keyライブラリはVer.5~6の時期に作成されたため、表記が最新版とは異なる部品がありますので予めご了承の上ご利用ください。

上記の注意点ですが、Digi-KeyさんもKiCad支援企業の一社ですので、そう遠くないうちに最新バージョンに合わせて更新されると思います。

様々なデータライブラリを入手して、自在に回路設計を行えるようになりましょう。

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ABOUT US
KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。