既存データから新しいシンボルを作図する

今回は、既存シンボルを利用して新しいシンボルを作図する方法について、手順をたどりながら説明します。

ライブラリーも完ぺきではない

KiCadにはインストールと同時に、多くの回路図シンボル、プリント基板用フットプリントが登録されています。

ですが、世界中全ての電子回路シンボルが登録されている訳ではなく、使用を続けるといろいろな部品の情報を追加する必要が生じる場合があります。

回路図シンボルの場合、シンボルエディターを使えば自由に新規シンボルを作図できますが、既存データを基にして新しい記号を作図することも簡単にできます。

本記事では、KiCadに登録済の東芝製トランジスタアレイ「TBD62783A」のデータを使って、「TBD62083A」のシンボルデータを作図してみます。

「トランジスタアレイ」とは、複数のトランジスタを1つのICパッケージに配列した半導体集積回路です。スイッチング素子として、リレーやランプなどのON/OFF制御回路をコンパクトに設計するために用いられ、スマートフォンやパソコン、テレビなど、身近にある日常的に使っている電化製品の多くに使用されています。

トランジスタアレイの出力方式には、シンクタイプ(ローサイドスイッチ)とソースタイプ(ハイサイドスイッチ)があり、負荷の状態や制御の方法によって使い分けられます。

KiCadの標準状態のシンボルライブラリーには、ソースタイプのトランジスタアレイ「TBD62783A」は登録されていますが、シンクタイプのトランジスタアレイ「TBD62083A」はデータの登録がありません(今後の更新で追加される可能性はあります)。

これまでのブログ記事でも解説してきたようにエディターで作図すれば良いのですが、せっかくなので既存のラインナップとフォーマットを揃えたシンボルを作りましょう。

既存シンボルを「コピー」しよう

最初にシンボルエディターを起動し、左上のフィルター欄に「62783」と入力します。すると、登録済のトランジスタアレイ「TBD62783A」のシンボルが読み込まれます。

ここで「ファイル」-「名前を付けてコピーを保存」の順にメニューを選択します。

保存先のライブラリーを指定するウィンドウが開きますので、名前を「TBD62083A」に、保存先の新規シンボル用ライブラリーを指定して、OKボタンを押します。

まだシンボルの詳細を編集していませんが、新規シンボル「TBD62083A」が追加されました。ただし、この段階ではエディター画面には「コピー前」のシンボルデータが表示されています。間違ってこのまま編集操作を行わないように注意して下さい。

コピーしたシンボルを編集しよう

「名前を付けてコピーを保存」が完了したら、今度は画面左上のフィルター欄に「62083」と入力しましょう。

すると、先ほど登録した「TBD62083A」のファイルがヒットするのでこれを読み込みます。読み込まれたデータはまだ詳細を編集していませんので、シンボルは元のソースタイプのままです。

変更対象のシンクタイプトランジスタアレイ「TBD62083A」のデータシートを参照しながら、編集を進めていきます。

プロパティ内にあるシンボルの説明、データシートのリンクは後でミスが起きないように書き換えておきましょう。

シンクタイプはソースタイプと電源、GNDのピン配置が逆なのでこちらもピンのプロパティから変更します。

入力ピンについては変更ありません。出力ピンはプロパティを開いて「エレクトリカルタイプ」を「オープン コレクター」に変更します。

また、シンボル中央に回路タイプを示す図記号が描かれています。これもこのままにしておくと混乱の原因となりますので、シンクタイプの回路図記号に変更しておきましょう。

一通りの修整が終わったら「全て保存」アイコンを押して変更を保存します。

もしここまでの作業を、読み込んだばかりの「TBD62783A」のシンボルで行ってしまっていた場合は、ここで「名前を付けてコピーを保存」メニューから正しい型番で保存して下さい。保存後シンボルエディターを閉じる時に編集画面を保存するかが聞かれますが、コピー保存を実行してあれば変更は破棄してもらって大丈夫です。

今回は両方とも同じ形状の半導体パッケージだったため、シンボルに割り当てるフットプリントについては解説を省略しました。必要に応じてシンボル登録の段階でプロパティの編集でフットプリントも変更できます。

このような手順で、既存シンボルから新しいシンボルを派生して作図できます。

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KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。