作った基板を外注製造しよう
今回はPCBレイアウトエディタで設計を終えたプロジェクトファイルから、基板製造の為に外注企業に送付するデータの作成手順について紹介します。
KiCADでのプリント基板設計については別記事
もご覧ください。

画像は(株)ユニクラフト社WEBサイトで紹介されているプリント基板の基本構造の解説図です。
非常に分かり易く説明されており、中央でプリント基板の形状を決める外形カットデータ、両面のシルクスクリーン層、レジスト層の基となるデータが必須で、基材と呼ばれる板材を上下で挟んでいく様に導体層が2層1組で成形されていきます。
製造用ガーバーデータを用意する
外注する際は製造に必要な「ガーバーデータ」他を用意します。
KiCADでガーバーファイルを出力するには「ファイル」-「プロット」の順にクリックする、又は画面中に並んでいるプロッタのイラストが描かれたアイコンをクリックします。


サブウィンドウが開きますので、必要な操作を行いファイル出力を行います。
出力ファイル形式はガーバー以外にも「PostScript」「SVG」「DXF」「HPGL」「PDF」等が選べます。ファイル毎に必要とされる場面が異なりますが、今回は外注用データが目的なので初期設定のガーバーのままにします。


次に、ガーバーを出力するレイヤーを選択します。
下の画像は両面実装2層基板の例ですが、ユーザー層に何か特記事項などがある場合などはチェックを入れて追加する等行ってください。

次に出力ディレクトリを決定します。
プロジェクトフォルダ直下に保存先を選択すると、大量のファイルが一斉に追加されてしまいファイルの取り扱いで思わぬミスをする事があります。
プロジェクトファイル下に別途フォルダを作成、出力ディレクトリに指定して管理しやすい様にしましょう。


出力ディレクトリを指定したら下部の「全般オプション」「ガーバーオプション」を設定します。
基本的には標準設定のままでも今まで問題が起きた事はありませんが、設計したデータや発注業者によって必要になったら都度設定を行う様にして下さい。
一通りの設定が終わったら、下部の「製造ファイル出力」ボタンを押します。
先に選択した出力先のフォルダに、1レイヤー毎に1個のガーバーファイルが生成され保存されます。

基板に穴をあけるドリルデータを生成する
出力メッセージが止まり、ガーダーの生成が終わったら、続けて基板に穴をあける為のドリルデータを生成する為、下段右端にある「ドリルファイルを生成」ボタンを押します。

更にサブウインドウが開きますので、先程と同様に出力先ディレクトリを指定して画面下段の各種設定を行います。

ドリルファイルの出力先、各種設定は基本的には標準設定のままガーバーファイルと同じフォルダの中に出力すれば多くの業者さんは対応してくれます。
が、製造業者によっては細かい指定を指示される事もあります。その場合は上図の設定画面から設定を変更して再出力しましょう。
「絶対座標系」と「補助座標系」の取扱い
ガーバーデータとドリルファイルを出力する際は、座標系の取り扱いに特に注意しましょう。
PCB設計の際に補助座標系を使用していて、その値を製造にも反映したい場合があります。
ガーバーデータ、ドリルデータどちらの出力ウィンドウにも補助座標系の使用に関する設定項目がありますので、補助座標系を使用する場合は両方とも必ず同じ設定にする様にして下さい。
片方だけ補助座標を選択し、もう片方が絶対座標のままデータが生成された場合、製造業者の方では座標の異常を修整する事が出来ませんので注意して下さい。

部品実装が全部半田付けで良いプリント基板の場合、以上の操作で生成されたガーバーデータと部品実装図、回路図エディタから生成されるBOMファイルから編集した部品表を用意すれば製造が可能です。
使用するのが面実装(SMD)部品で、部品実装まで外注する場合は位置情報ファイル=ポジションファイルの生成が必要になります。
PCBレイアウトエディタから「ファイル」-「各種製造用ファイル出力」-「フットプリントと位置情報のファイル」の順にクリックしてウィンドウを開きます。


手順は今までと同じで、出力ディレクトリを指定、必要に応じて各種設定を変更して「座標ファイルを生成」ボタンを押して位置情報ファイル=POSファイルを保存します。
目視確認用の「実装図」を作る
最後に部品実装を依頼する時に欠かせない「実装図」の作り方についてご紹介します。
基本的には表面/裏面の部品が乗った状態が確認できる図を用意します。
試作などで手乗せ実装をする場合は部品の向きや1番ピンの位置といった極性の情報なども必要であれば追記する必要があります。
ここではKiCADの印刷機能を利用して実装図の基になる図をPDF出力する方法について説明します。
PCBレイアウトエディタで「ファイル」-「印刷」の順にクリックします。
最初に表面の実装図を印刷する場合の設定を、以下の様に指定します。

・ 導体レイヤーは選択無し
・ テクニカルレイヤーは「F.SilkS」「F.Mask」「Edge.Cuts」の3つを選択
※ 追加情報が必要であればユーザーレイヤーなどを利用
・ ページ付けは 「シングルページに全レイヤー」を選択
設定が終わったら「印刷」ボタンを押して表面のPDFファイルを保存します。

次に、裏面を同様に設定を行いPDFファイルを保存します。

裏面を保存する為に、テクニカルレイヤーを「B.SilkS」「B.Mask」「Edge.Cuts」の3つに変更します。
他の設定は特に変更しませんが、「ミラーして印刷」のチェックは必要に応じて入れておきます。
- 外形形状が複雑な場合、ミラー処理が正常に処理できない場合があります。
この場合はミラーして印刷のチェックを外して、PDFから画像を抽出する際に反転する等の画像処理で対応して下さい。

保存されたPDFから線画部分を抽出して、必要な情報を追記する等して実装図として利用する事が出来ます。

以上の手順で、KiCADで設計したデータを使って外注用のファイルを準備する事が出来ます。
外注企業への手配については別記事
「KiCADからプリント基板を発注する/ユニクラフト社の場合」
「KiCADからプリント基板を発注する/P板.comの場合」
等でも解説しています。そちらも併せてご覧頂ければ幸いです。