プリント基板設計でよく使われる「塗りつぶしゾーン(導体層ゾーン)」は、主にGNDや電源の接続に使われ、低インピーダンスでの接続が可能になります。
今回はKiCadのPCBエディターで塗りつぶしゾーンを配置する手順や、注意点について解説します。
1. 塗りつぶしゾーンとは?
塗りつぶしゾーンは、特定のネットに割り当てられた導体エリアです。

特徴:
- 指定されたネット(例:GND)に自動で接続
- 他のネットとの接触を避け、設定した間隔で塗り分けられる
- 低インピーダンスでの接続が可能
- 主にGND、VCCなどの電源部の面積確保に使用される
2. 塗りつぶしゾーンの追加方法(裏面に配置する場合)

- 編集レイヤーを裏面の導体層(B.Cu)に切り替え
- 右側のツールバーから「塗りつぶしゾーンを追加」をクリック
- 編集画面でゾーンの最初の角をクリック
- 「銅箔ゾーンのプロパティ」が表示されるので、以下を設定:
- ネット名(例:GND)
- レイヤー(F.CuやB.Cuなど)
- サーマルリリーフなどのプロパティ
- OKを押してダイアログを閉じ、図形をクリックで描いていく
- 最後の点でダブルクリックしてゾーンを閉じる
(閉じていない場合は自動で直線が追加されて閉じられる)


3. ゾーンの塗りつぶしを実行する
ゾーンの形状を描いただけでは、まだ導体は存在せず電気的な接続は確立されていません。
塗りつぶし手順:
- ゾーンの外形を描き終えたら、右クリック →
「編集 → すべてのゾーンを塗りつぶす」を選択

ワンポイント:
- 「塗りつぶし」「塗りつぶしの削除」は一括で塗りつぶすか、個別ゾーンを選んで塗りつぶすかを使い分けられます。
4. プロパティの再編集とサーマルリリーフの設定
描いたゾーンをダブルクリックすると、再び「銅箔ゾーンのプロパティ」が開きます。
ここでは以下の設定が可能です:
- パッドとの接続方法(サーマルリリーフの有無)
- クリアランス(他ネットとの距離)
- ゾーンの接続条件や形状の調整

🔧 注意点:
サーマルリリーフを有効にすると、はんだ付けはしやすくなりますが、極端に細かい隙間は製造不良の原因になることがあります。
5. ゾーンの更新タイミングに注意!
KiCadでは、次のような操作を行ってもゾーンは自動で更新されません。
- ゾーン内のフットプリントを移動
- 配線を追加・削除
- ゾーンの形状、プロパティを変更
更新するには:
- 一度「塗りつぶしを削除」してから再度塗りつぶす
- または「DRC(デザインルールチェック)」実行時に更新する設定を利用する

6. 視認性を上げる工夫:ゾーンの表示設定
配線が増えてくると、塗りつぶしゾーンが邪魔で見づらくなることがあります。
見やすくする方法:
- 左側ツールバーの「ゾーンを外形線で表示」ボタンをオンにすると、ゾーンの外枠だけが表示されます。
- 塗りつぶしは表示から消えて見やすくなりますが、塗りつぶしそのものは維持されたままであることに注意が必要です。

塗りつぶし解除と表示非表示は別!
- 「表示しない」だけでは塗りつぶしは維持されます
- 外枠表示だけで調整を進めた後は一度表示に戻して確認する習慣をつけましょう
7. レイヤー全体の表示を切り替える
ゾーンだけでなく、レイヤー単位で表示を変更したい場合は、右側の「外観パネル」を活用します。
操作方法:
- レイヤー名の左側にある、目のアイコンをクリックして表示/非表示を切り替え

- 「非アクティブレイヤーオプション」から、選択していないレイヤーに対して以下の設定も可能です。
- 非表示にする
- 淡色表示にする

まとめ
塗りつぶしゾーンは、KiCadにおける電源・GND配線の面積確保の要として活用できます。
正しく使いこなすことで、配線のインピーダンスを下げ、製品としての安定性も向上します。
押さえておきたいポイント:
- ネットを指定して正しい層に配置
- 必ず「塗りつぶし」を実行して電気接続を確立
- 編集後はゾーンを再描画・更新
- 表示切り替えで作業効率アップ
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