プリント基板(PCB)の設計においては、見落としがちな小さなミスが製造後に大きな問題を引き起こすことがあります。
KiCadには、そうしたミスを未然に防ぐための便利な機能「デザインルールチェック(DRC)」が搭載されています。
今回は、PCBエディターにおけるDRCの役割と使い方、設定方法について初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

DRCとは? 回路図のERCに対応するチェック機能
KiCadの回路図エディターには「ERC(エレクトリカルルールチェック)」という、回路図用の検査機能があります。PCBエディターにおけるDRCは、この検査機能の基板レイアウト版とも言える機能です。

DRCでは、以下のような設計ミスや製造時の問題を予測した警告の有無をチェックすることができます
- 回路図とレイアウトの不一致
- 導体間のクリアランス(間隔)が不足している箇所
- パターンが短絡(ショート)している箇所
- どこにも接続されていない不要な配線
これらのエラーは、製造や動作確認の段階になってから発覚すると大きな手戻りになるだけでなく、製品化後に発覚すると大きな事故の原因にもなる恐れがあります。設計の早い段階でDRCを使って確認し、都度修整することが非常に重要です。
DRCルールのカスタマイズも可能!
KiCadでは、デフォルトのルール設定だけでなく、ユーザー自身が独自のルールを設定することも可能です。
たとえば、クリアランスの最小値や、ビアのサイズ制限など、使用する製造業者の仕様やプロジェクトの要件に応じて細かく調整できます。
また、各ルールに対して「違反の深刻度(Severity)」を設定することができるので、重要なチェック項目には高い優先度を設定し、設計段階で確実に対処できるようにしておくと安心です。

設定手順は以下のとおりです:
- メニューから「ファイル」 → 「基板の設定」を開く
- 「デザインルール」タブを選択
- 「違反の深刻度」で各ルールの重要度を設定
DRCの実行方法とエラーの確認手順
DRCの実行そのものはとても簡単です。PCBエディターのメニューから、
- 「検査」→「デザインルールチェッカー」
を選択するか、ツールバーのボタンから直接起動できます。

表示されたウィンドウの右下にある「DRC実行」ボタンをクリックすると、自動的にチェックが開始されます。
チェック結果は画面下部にリスト形式で表示され、問題のある場所にはマーカーが付けられます。マーカーをクリックすれば、問題箇所へ自動的にジャンプできるため、修正作業もスムーズに行えます。

エラーや警告がすべて解消されれば、再度DRCを実行しても「エラーなし」と表示されます。
設計途中でもDRCを活用しよう!
DRCは、製造用データの出力前だけでなく、レイアウト作業の途中でも定期的に実行することが推奨されます。
作業の節目ごとにDRCをかけておくことで、後からまとめて大量のエラーに対応するリスクを減らし、修正の手間も大幅に省けます。
まとめ:DRCを活用して高品質な基板設計を
PCBエディターのDRC機能は、初心者から上級者まで全てのPCB設計者にとって強力な味方として利用できます。ルール設定を適切に行い、こまめにチェックを実行することで、ミスのない、信頼性の高い基板設計を実現しましょう。
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