「シンボルのピンまたは配線の端がグリッドから外れている」って何?
今回は、「回路図エディター」のERC機能について、最近のアップデート後で話題になっている不自然な動作について書いていきたいと思います。
プリント基板を設計する前段階として、回路図エディターを使用してシンボルを配置し、ワイヤーを繋いで回路図を描きます。描かれた回路図に問題が無いかチェックするために「エレクトリカル・ルール・チェック(ERC)」を実行して問題点を洗い出し、必要があれば修整することで回路の段階で完成度を高めていくことができます。
記事を執筆している時点でのKiCad最新バージョンでは、このERC実行時に
「シンボルのピンまたは配線の端がグリッドから外れている」
という警告が回路図中のほぼ全ての接続点に発生するという状態が起きており、これは大丈夫なのか?と不安になったり、問い合わせを送って頂くユーザーさんがいらっしゃいます。

結論から言うと、この警告メッセージ自体は回路設計の不具合ではありませんので無視しても問題はありません。
ただし「警告メッセージは無視しても大丈夫」と誤った認識をしてしまうと、重大な設計ミスを見落とす原因にもなりますので、今回メッセージが発生している原因を確認し、きちんと解消するようにしたいと思います。
原因:追加された設定項目の初期値が違っている
このメッセージが出ている原因は、簡単に言ってしまえばVer.8のマイナーアップデートで回路図エディターの設定項目が増え、その増えた項目の初期値が原因でERCに悪さをしているだけです。したがって、簡単な操作で問題をすぐに解消できます。
ERCで警告メッセージが出ている行を選択した状態で右クリックを押し、開かれるサブメニューから「接続グリッドの間隔を編集」メニューを選択します。
回路図エディターの「メニュー」から「回路図の設定」を選んでも同じウィンドウが開きます。

「回路図の設定」メニューが別ウィンドウで開きますので、下段の「接続」の項目にある「接続グリッド」の値を50milsから25milsに変更します。

変更したら「OK」ボタンを押してウィンドウを閉じ、再度ERCを実行すると「シンボルのピンまたは配線の端がグリッドから外れている」の警告は表示されなくなります。

旧バージョンでは回路図の設定メニュー内にある接続の項目に、接続グリッドの値を入力する欄が無い時期が長かったためつい見落とされてしまいますが、設定可能な最小値の25milsにすることで、正常にERCを実施できるようになります。
「いつも通り設計していただけなのに大量の警告メッセージが出てきてびっくりした」という方は、シンボルの編集やシート上グリッドの確認を行う前に、回路図の設定項目を見直してみることをお勧めします。
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