回路図エディターでフットプリントを割り当てる手順と、ネットリスト等を作成する作業についてVer.8版として解説します。
プリント基板設計の前準備「フットプリント」割り付け
回路の作図が終わったら、それぞれのシンボルに対応した電子部品の形状をデータに紐づけしていきます。

プリント基板(PWB)はその表面に部品を取り付けるために、銅箔を露出させた接合端子を基板表面に成形しています。この接合端子の形状を含めた電子部品取り付けに要する空間などが描かれたデータをフットプリントと呼び、部品の規格や使用目的ごとに様々な形状が用意されています。
このフットプリントと回路図中のシンボルの紐づけがされていなければ、PWBの設計は完了しません。

半導体ICに代表されるように、その形状には国際的な標準規格が定められています。多くの半導体部品はこの規格にもとづいた形状に作られており、KiCadにもある程度標準化されたフットプリントのライブラリが用意されています。
これらの情報を利用して、設計した電子回路に使用する部品と同じ形状のフットプリントを割り当てた設計データ作成します。
フットプリントの割付作業を実行するには、回路図エディタで「シンボルのマーク」と「フットプリントのマーク」が重なって1つになっているアイコンをクリックします。


ファイルメニューからは[ツール]-[フットプリントを割り当て]の順にクリックします。

アイコン/メニューをクリックすると、下記のようなウィンドウが開きます。

フットプリント割り当て画面は、大きく三つのウィンドウが並んだ構成になっています。
向かって左の表示は、現在KiCadに読み込まれているフットプリントのライブラリの一覧です。
次に中央に、回路図エディタでアノテーションされたシンボルの一覧です。
Ver.7シリーズ以前の設計データを読み込んでこの画面を開くと、インストール時に更新された、現在のフットプリントライブラリに含まれていないデータが存在している場合は、その行が黄色に色がつきます。新しいフットプリントデータに更新するか、改めてフットプリントを作図する等で対応して下さい。
最期に右側の欄には、ライブラリとシンボルを選択すると、それに対して紐づけ可能なシンボルの一覧がフィルタリングされて表示されます。

フィルタリング機能を活用しよう
ここで、「フットプリントフィルタ」を活用すると、割り当てたいフットプリントを効率よく探せます。

複数のシンボルアイコンが並んでいるエリアがあり、それぞれのアイコンをクリックするとアイコンの背景が水色に切り替わりアクティブになります。

左から順に

「シンボルのフットプリントフィルターを使用」
(旧呼称:「回路図シンボルフットプリントフィルタを使用」)

「ピン数でフィルター」
(旧呼称:「ピン数でフットプリントを絞り込み」)

「ライブラリでフィルター」
(旧呼称:「ライブラリでフットプリントを絞り込み」)

そして、名前の一部またはパターン、形状などフリーワードでフットプリントを絞り込むテキストウィンドウが用意されています。
このテキストボックスに使用したい部品の名称、あるいはフットプリントの種類などキーワードの一部を入力すると、該当するフットプリントがウィンドウ右側の選択欄に表示されます。
最初に一番左のアイコンでフィルター使用のON/OFFを選択し、次に並んでいる二つのアイコンとテキストウィンドウの組み合わせで絞り込む範囲、内容を決めてフットプリントを探します。
但し、フィルターの組合せによっては登録されているフットプリントが全く該当しないかのように表示されないといった現象も起きます。特に複雑なピン構成のICなど半導体素子の場合、ピン数で絞り込みを掛けると完全に一致したシンボル以外は表示されなくなることがあります。フィルター機能はON/OFFを適宜使い分けましょう。
フィルターを利用してフットプリントが探せるようになったら、それぞれの回路シンボルにフットプリントの割り当て作業を進めて行きます。

手順としては以下の3ステップの繰り返しです。
- フットプリントを紐づけたい回路シンボルの行を選択(クリック)する。
- 使用したいフットプリントが登録されているライブラリを選択(クリック)する。
- フィルター機能などを活用して表示された候補の中から、使用するフットプリントを選択(ダブルクリック)する。
が、ここで一つ問題が生じます。紐づけ作業のウィンドウに表示されるフットプリントの数は膨大なのに、選択欄には文字情報しか表示されません。
このままでは確認作業が大変煩雑になりますし、後の工程で間違いの原因になります。
各種ビューワを利用する
この問題を解決する方法があります。
フットプリントを選択したらその場で右クリックして出てくるメニュー「選択したフットプリントを表示」を左クリックします。
すると、小さな別ウィンドウが開き、現在選択されているフットプリントが表示され、その形状を確認できます。

表示されるウィンドウでは、登録されている情報をビューワで確認でき、接続端子であるパッドや外形の寸法を計測できます。

更に、上部メニューにある「3Dビューワ」アイコンをクリックすると、登録されている3Dモデルの形状も確認できます。


これらのビューワーウィンドウは、一度メニューから呼び出して開いてしまえば、選択するシンボル、フットプリントを変更しても自動で表示が更新されます。
また、フットプリント割り当てウィンドウの左上のメニューに「選択したフットプリントを表示」アイコンがありますので、これをクリックしても同じサブウィンドウを呼び出せます。

機能としてはとても便利ですが、強いて言えば「開かれるサブウィンドウの数が多い」点は注意が必要かもしれません。
いま解説している「フットプリントの紐づけ」作業を行うだけでも、回路図エディタを含めて3つのウィンドウが開かれ、それぞれ連動して変わる表示を確認する必要があります。

2画面環境やモニタが充分に大きく表示できるデスクトップなどであれば問題なく使用できそうですが、外出先でノートPCを使って作業を行う場合などでは、画面の切り替えが煩雑になりかえって作業効率が低下します。
1世代程度前のノートパソコンのように、スペックが比較的軽量なコンピュータでも動作するのがKiCadの強みではありますが、ディスプレイの表示環境は充実させておきたいものです。

全てのシンボルに紐づけが終わったら、「適用して、回路図の保存&実行」ボタンを押してからOKボタンを押してください。
旧バージョンのKiCadでは、このボタンを押さずにOKボタンを押したことで、今まで苦労して紐づけた情報がすべてクリアされるという冗談みたいなトラップ又はバグが存在しました。
「編集中だけど一旦閉じたい」という時に必ずこのボタンを押す習慣が既に身についている人は、きっとKiCad歴の長い方だと思います(笑)
公式も「対策は実施済」と言われていて、もはやおまじないのような気がしないでもないですが、

途中保存を忘れずに、アクションが一区切りする度にこちらのボタンを押す習慣を付けることを強くお勧めします。
筆者もこれまでこのボタンで過去何回泣いた事か・・・最新版で「もう大丈夫」と言われれても、押さないでデータが消えたという話を未だに耳にするので特に注意したいところです。
通常作業中は生成する必要がなくなった「ネットリスト」
フットプリントの紐づけが終わった回路図データからは、ネットリストファイルを生成することも可能になります。
ネットリストとは、回路図に描かれた部品間を結ぶ配線(ワイヤー)の接続情報を記したデータであり、KiCadのライブラリに登録されているフットプリントも紐づけた状態でファイルを生成しておくことで、次の工程であるプリント基板設計作業へスムーズに情報を引き渡すことができます。
なお、現在のバージョンでは「回路図エディター」と「プリント基板エディター」間のデータについてはKiCad専用のデータでエディター間を共有されているため、特に理由がない限りネットリストを生成する工程を行わずに回路図からプリント基板設計へ移行可能になっています。

そのため、旧バージョンに存在したネットリストを生成するアイコンは回路図エディター内に存在せず、ネットリストを生成する場合はエディター上部のメニューから「ファイル」-「エクスポート」-「ネットリスト」の順に選択してサブウィンドウを表示します。

生成メニューから、OrcadやCadStar、最新版ではAllegroといった他EDAにデータの引き渡しが可能なネットリストを生成できます。これまでKiCad標準のネットリストは「Pcbnew」と表記されていましたが、最新版ではKiCadと表記されます。生成したいタブを選択、必要に応じてプロパティを編集したら「ネットリストをエクスポート」ボタンを押してファイルを保存します。
部材調達に必須となる「部品表」
回路図エディターによる回路設計がほぼほぼ完了したら、部品表(BOM)も生成しましょう。


回路図エディター上部のアイコン、又はファイルメニューから[ツール]-[部品表を生成]の順にクリックします。

メニューを選択すると、部品表生成のためのサブウィンドウが開きます。

旧バージョンでは様々なプラグインを読み込んで出力する内容を編集していましたが、最新版では表示する内容やデータの構成を編集するタブと、エクスポートするファイルの書式を選択するタブの2段階を経てデータを作成する方式に変更されました。

ほぼ標準設定で保存されたcsvファイルを表計算ファイル等で開くと、次のような構成になっています。

次の工程であるPWB(PCB)設計に使用する情報はほぼここにまとめられています。また、基板試作時に必要となる購入部品の一覧も含まれていますので、必要に応じてデータを抽出、編集して利用して下さい。
ここまでの作業で回路図作成、フットプリントの割り当てとネットリスト、部品表の準備ができたら、プリント基板エディターに切り替えて基板の設計作業に着手可能になります。

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