今回は基板外形の描き方について、いくつかの例をご紹介します。
プリント基板のレイアウト設計(アートワーク)を行う上で絶対に必要な基板外形ですが、意外と上手く描けずに手が止まったりするものです。
基本的な描き方からちょっとした応用まで順番に紹介していきますので、これからKiCadに挑戦する人はもちろん、ある程度使ってきた人もおさらい的にご覧頂ければと思います。
基板外形を描くタイミング
基板外形は、プリント基板の設計をする上で必ず描く要素なのは言うまでもありませんが、プリント基板設計のどのタイミングで描くか?については人によって様々です。
よく言われるのは
「ネットリストを読み込む前に、最初に外形を描く」
「描いた外形にフットプリントをレイアウトしなければ部品が収まるか確認できない」
といった話です。確かにその方が効率は良いと筆者も思います。ですが、時と場合によっては外形設計を最後にしても良い場合もあります。絶対にこうだ、ということではありませんので気を楽にしていきましょう。
簡単な例として、ちょっとしたマイコン基板を設計する場合を挙げてみます。
今回の前提としては、ケースに入れるなどの理由で基板の外形図が先にでき上がっているものとします。
PCBエディターの外形レイヤーに描画するための寸法情報が揃っていれば、すぐに着手できます。
「グリッド設定」を活用しよう
外形を描く際、エディターの「グリッド設定」が重要になります。
フットプリントの配置や導体レイヤーに配線を行う際もグリッド設定を最適な間隔に設定しますが、基板外形を描画する際も同様にグリッド間隔の設定を行います。
今回の例では寸法を1.00mm単位で描けるようにしていますので、編集レイヤーに「Edge.Cuts」を選択したのちにグリッド設定を「1.0000mm(0.0394 in)」に設定します。
また、外形描画に限らず任意のタイミングでグリッド原点を設定できますが、このグリッド原点の設定はガーバーデータの出力時に原点として機能するだけで、編集中に使用する描画やシンボルの位置データには影響しませんので注意しましょう。
では早速、基板外形線を描いていきましょう。
1)「線分=セグメント」を描いていく方法
まず一番シンプルな方法として、画面中に線分を描いていきます。
エディター右側のアイコン「線を描画」をクリックして選択、次に編集画面の任意の場所をクリックします。
次に目標とする場所でクリックすることで、1本目の線分が描かれます。基本的にはクリックする度に次の線分描画が開始され、1周回って線分が閉じるまで、あるいは描かれた他の線分とつながるまで描画が繰り返されます。
この際、線分の始点/終点は、先ほど設定したグリッド上でしかクリックできません。微調整はあとでもできますが、なるべくグリッド間隔を最初に調整して描くことをお勧めします。
もし途中で描画を終了したい場合は、右クリックで開かれるサブメニューから「キャンセル」を選択すると、最後に描かれた線分までの状態で描画が停止します。
「とりあえず描いてみたけど寸法や形状がおかしい」
という場合は、線分=セグメントのプロパティを開いて位置や長さを調整します。
「セグメントのプロパティ」では、線分の始点と終点の座標を直接入力できます。また、下の段にある「長さ」を直接入力することで、始点から始まる長さを指定することも可能です。
長さの項目のすぐ下に「角度」を入力する項目があり、任意の確度を数値で入力することもできます。ただし、自由角度で線分を描く場合は、エディター画面の左側にある環境設定のアイコンから「水平、垂直、45度に制限」のアイコンを無効(クリックして水色を消す)にしてください。
この制限が有効だと、手動で角度を入力した線分を、マウスのカーソル移動で選択できなくなることがあるので注意しましょう。
ネジ穴となる円も同様に編集して、任意の外形を描くことができます。
ただし、この状態ではそれぞれのセグメントは独立した、バラバラの状態になっています。個別に編集する上では問題なく操作できますが、全体を一括して移動したいという場合には少々不便です。
外形形状が完成したら、全体をドラッグするなどで選択してから右クリックで開かれるサブメニューの「グループ化」-「アイテムをグループ化」を選択して、基板外形のセグメントをグループ化しておきます。
グループ化することで画面中の移動などは一括して行えますが、セグメントの長さや位置調整はこれまで通り個別に行うことになります。
グループ化はなるべく外形の形状が完成してから行った方が良いでしょう。
2)「短形」を描いて編集する方法
「外形は後でも編集したい」という意見は多々あると思います。
実際、設計途中で寸法、形状を修整したいという事態に遭遇することはあります。
次は、そういう場合に対応できる描き方をご紹介します。
先ほどと同様に編集レイヤーに「Edge.Cuts」を選択したのち、今度は「短形を描く」又は「ポリゴンを描く」を選択します。
今回は説明しやすい方という事で「短形を描く」を選択します。
始点として任意の場所をクリックしたら、カーソルを移動させることで正方形が描かれます。この「短形を描く」メニューからのマウス操作では「正方形しか描かれない」ので、慌てずにまずは任意のサイズで描いてください。
描いたあと、選択して表示される操作ポイントやプロパティ画面を使用して、希望するサイズに調整します。
現時点では四角形=角のコーナーカットが行われていない状態ですが、このあとの工程で追加していきます。この時点では希望する基板の縦横の寸法を入力して形状編集を進めます。
手順としては
「始点のXY座標を決める」
「終点のXY座標を決める」又は「高さ、幅を決める」
の順番で行うとスムーズに編集できると思います。
基本形状の編集ができたらOKボタンを押して、コーナーカットを追加しましょう。
短形メニューで描いた四角形の四隅をコーナーカット、あるいはフィレット(丸める)する処理は比較的簡単にできます。
対象の短形をクリックしてから右クリックでサブメニューを開きます。
メニューの中から「形状の変更」-「面取りライン」又は「線をフィレット」を選択します。
今回は面取りラインを選択します。すると「面取りのセットバックを入力」するサブウィンドウが開きますので、コーナーカットしたい長さを入力して下さい。
今回の参考例では2mmのコーナーカットを行いますので、セットバックは「2」と入力してOKボタンを押します。
これによって、短形の四隅が同時にコーナーカットされます。
基板外形が比較的単純な四角形+コーナーカット又はフィレットで構成される場合は、以上のような手順が効率的ではないかと思います。
ただし、この方法でも最後に角処理まで行った時点で短径の位置関係を保った状態は解除され、最初の描画と同様に「セグメントの集合体」となってしまいます。
形状が確定したあとでも簡単に編集できないでしょうか?
大丈夫です。以下の手順で、アートワーク中でも編集できる外形データにしましょう。
3)セグメントから「ポリゴンデータ」に変換する方法
最初の描画作業からでもできますが、基板外形を一周するセグメントを選択してから右クリックでサブメニューを開き「選択対象から作成」-「選択対象からポリゴンを作成」を選択します。
変換設定のサブウィンドウが開きますので「最初のオブジェクトの線の幅をコピー」を選択し、下段の「変換後に元のオブジェクトを削除する」にチェックが入っているのを確認してOKボタンを押します。
すると、セグメントの集合がポリゴンデータに変換されますので、一括して移動させたり、操作点をドラッグして図形の変形を行えるようになります。
ポリゴンによる形状編集の場合、セグメントのプロパティ編集のように具体的な数値を入力して微調整できません。その代わり、自由に「頂点=角を追加」して、より複雑な形状に対応可能です。
これらの操作を組み合わせれば、自由に基板外形のデータを作成できます。
更に、機械設計データから用意されるCADデータを取り込んで外形データにする方法もありますが、それについては後日、設計事例をご紹介する際にあわせて解説したいと思います。
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