【KiCad Ver.9】回路図エディタ・ERCチュートリアル

エレクトリカルルールチェック(ERC)で電気的なミスを防ごう!

回路図を描き終えて、「目視で問題がなければ大丈夫」と思っていませんか?
目には見えない接続ミスや配線忘れを見つけるために、KiCadには「エレクトリカルルールチェッカー(ERC)」という便利な機能が用意されています。

簡単な回路図を自由に描けるようになったら、大規模な設計に着手する前に、ERCの使い方をしっかりと覚えて活用するクセを付けておきましょう。


ERC(エレクトリカルルールチェック)とは?

ERCとは、回路図の電気的接続が正しいかどうかをチェックするツールです。KiCadでは、以下のような問題を自動的に検出できます。

ERCで検出できる主なエラー

  • 未接続のピン
  • 複数の電源出力がショートしている
  • 電源入力ピンに電源が供給されていない
  • ネットラベルのミス
  • 未注釈のシンボル

これらは目視では見落としがちなミスですが、ERCを実行すればKiCadが自動処理を実行してくれるので簡単に確認できます。


ERCのチェックルールの設定方法

KiCadでは、ERCでチェックするルールの「重要度」をカスタマイズできます。

変更手順

  1. 【ファイル】 → 【回路図の設定】を開く
  2. 【電気的なルール】 → 【違反の重大度】を選択
  3. チェック項目ごとに重大度を「エラー」「警告」「無視」に変更可能

ただし、安易に無効化せず、必要なレポートは記録する習慣をつけておきましょう!


実際にERCを実行してみよう

シンプルなLED回路でERCを試す

今回は、LEDを点灯させるだけの簡単な回路を例に、実際にERCを実行してみます。

手順

  1. 回路図エディターのツールバーから【ERC】ボタンをクリック
  2. 開いたダイアログで【ERCを実行】ボタンを押す

KiCadの標準設定のままでチェックを実行してみましょう。


ERCのエラー表示とその確認方法

エラーがある場合、ERCウィンドウに一覧表示され、回路図上に矢印で場所が示されます

  • ERCウィンドウでエラー項目をクリックすると、該当箇所がハイライト
  • 右クリックでそのエラーを「除外」または「クラスごと無視」も可能

ただし、実際には問題がなくても除外せず、記録として残しておいた方が安心です。


よくあるERCエラー:電源入力ピン未駆動エラー

KiCadを使っていると頻繁に、非常に頻繁に遭遇するエラーの一つに、次のようなものがあります。

「Error:電源入力ピンが電源出力ピンによって駆動されていない」

はい出ました(笑)。多くのKiCad初心者が「なんじゃこりゃ?」とWEB検索するキーワードの登場です。

これは、VCCやGNDなどの電源ネットに出力ソースが見つからないというKiCad特有のチェックルールに基づいた警告です。


PWR_FLAGシンボルで解決しよう!

このエラーの解決には、KiCad標準のPWR_FLAGシンボルを使用します。

PWR_FLAGとは?

  • フットプリントを持たない特殊シンボル
  • 電源ネットに対して「ここが電源です」と、”KiCadに”宣言する目的で使用

使用方法

  1. ライブラリから「PWR_FLAG」シンボルを呼び出す
  2. VCCやGNDなどの電源ラインに接続する
  3. 再度ERCを実行すると、エラーが解消される

ERCはシミュレーターではありません!

大切なポイントとして、ERCでは「回路の動作が正しいかどうか」までは判断できません。
実際の動作確認を回路図の段階で実行したい場合は、KiCadの「シミュレーター機能」を使用する必要があります。


まとめ|ERCは必ず実行しよう!

  • 回路図完成後は必ずERCを実行する習慣を!
  • 目に見えない接続ミスを防ぎ、基板設計トラブルを回避
  • 電源エラーは「PWR_FLAG」で解決
  • 重大度設定は慎重に、レポートは記録しておこう

フットプリント割り当ても完了し、ERCの結果もOKとなったら、いよいよPCBエディターで基板レイアウトが可能になります!!


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。