「UltraLibrarian」を利用する

今回はKiCadで使用するシンボル、フットプリントを入手できる「Ultra Librarian」をご紹介したいと思います。

EDA用データ提供サービス「Ultra Librarian」

KiCadには、インストール直後の標準状態でも充分な数の回路図用シンボル、PCBエディター用フットプリントが登録されています。ですが、さまざまな回路基板を設計していく中で使用したいパーツのデータが登録されていない場合があります。

こういった時はシンボルエディター、フットプリントエディターを利用してデータを自作できるようになっていますが、世界中の企業が公開している、KiCadでも利用できる電子部品のライブラリーデータを入手して利用することも可能です。

豊富な電子部品を検索、購入が可能なDigiKeyのWEBサイトでは、「EDA及び設計ツール」のリンク先からKiCad用のライブラリーが入手できます。

DigiKeyで購入可能な電子部品を中心に使いやすいデザインのシンボル、フットプリントデータが用意されていますが、過去記事でもご紹介した通り、ライブラリーの最終更新が5年前と少々古く、最新の半導体部品は登録されていないのが注意点になっています。

また、本記事を書いている時点では同ページにある「パートナーライブラリー」の、Githubのリンク先は途切れており、今後もここからライブラリーデータを入手し続けられるか?については若干不安がある状態になっています。

ではどうすればよいのでしょう?今回の本題はここからになります。

「Ultra Librarian」を使用する

同ページ、KiCadライブラリーのリンクよりも少し上に「Ultra Librarian」のリンクが用意されています。

「Ultra Librarian」は、大規模なPCB CADライブラリーを提供するウェブサイトです。 エンジニアやPCB設計者向けに、30種類以上のCADフォーマットに対応したシンボル、フットプリント、3Dモデルをオンライン上の簡単な操作で、無料で入手可能です。

メールアドレスを使ったユーザー登録は必要になりますが、現在登録済の電子部品点数は1600万種を超え、多様なフォーマットでKiCad以外のEDAにも対応したモデルがダウンロード可能になります。

はじめて利用する人はWEBサイトの右上からユーザー登録を行いましょう。

登録後にログインすると、部品を検索してデータのダウンロードができるようになります。

型式などいろいろなキーワードで検索を行い、該当する部品を選ぶと回路図シンボル、フットプリント、3Dデータのプレビューが表示される画面に切り替わります。

プレビューを確認して問題無ければ、画面下側のダウンロードボタンを押します。

画面が切り替わり、入手したいデータを使用するEDAを選択します。有償/無償を問わず有名なEDAが並んでいますので、KiCadをクリックしてバージョンを選択します。

現在はバージョン5とバージョン6以降の2種類を選択できますので、最新のKiCadを使用している場合はバージョン6以降を選択してください。

フットプリントデータは提供に際して、プライバシーポリシーに同意する必要があります。

多くの場合は要約すると「ユーザー登録した個人情報は入手した部品の製造元と共有される場合があります」という内容ですが、特に問題が無ければチェックを入れてデータのダウンロードボタンを有効にしましょう。

KiCadを選択して入手されるデータは圧縮ファイルでダウンロードできます。

シンボル、フットプリント、3Dデータどれも独立したファイルになっていますので、こちらも過去記事で紹介した通りの手順で独自に用意したライブラリーにファイルを追加して利用して下さい。

ダウンロードしたファイルをKiCadで使えるようにしよう

おさらいになりますが、ダウンロードしたファイルを独自ライブラリーに追加してみましょう。

例としてマイクロコントローラ「ATMEGA32U4-AU」を検索、データを入手します。

データ入手後、KiCadからシンボルエディターを起動します。

独自シンボルを追加できるライブラリーを選択します。

はじめて追加する場合は「新規ライブラリー」を選択して、ダウンロードしたファイルを追加するライブラリーを用意して下さい。

次に「インポート」-「シンボル」の順に選択し、ダウンロードした圧縮ファイルを解凍したフォルダの中にある、単体のシンボルファイルを読み込みます。

必要があれば追加の編集を行い、シンボルを保存して使用できる状態にします。

フットプリントについても同様の手順で登録を行います。

今回の検索では、3Dモデルの項目にファイル選択の項目が表示されていませんでした。残念ながら今回検索したデータでは、3Dモデルの紐付けはされていなかったようです。

また、今回検索した「ATMEGA32U4-AU」は、シリーズのシンボルがKiCadの標準ライブラリーに既に登録されています。

「Ultra Librarian」はこういう既存部品よりも「最近流通が始まった最新の半導体部品」などの情報入手に適していますが、運営元の更新が間に合わないことも多々あります。

「必要な部品のデータを検索しても見つからない」場合は、データの作成をリクエストすることもできます。ただし、「リクエストを送ったから即作業が行われデータが入手できるようになる」訳ではなく、提供開始のタイミングはあくまでも運営元の判断で決まります。

急ぎでシンボル、フットプリントが欲しいという場合はその部品のデータシートを入手して、ご自身でシンボルデータ、フットプリントデータを作成してKiCadに使用することをお勧めします。

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ABOUT US
KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。