KiCAD Ver6.0.6と海外のサポート体制

2022年6月19日に「KiCAD6.0.6」がリリースされました。

Ver.6ユーザーは速やかに「Ver.6.0.6」へのアップグレード推奨

近年、KiCADを利用するユーザーが増えてきているのは嬉しい限りですが、Ver.6シリーズの提供開始のタイミングから現在に至るまで、重大な問題も数多く報告されてきました。

2022年5月末の段階で「Ver.6.0.5」がリリースされていましたが、今回最新バージョンとなる「Ver.6.0.6」がリリースされました。

本バージョンには、これまでのVer.6シリーズで起きている問題、特にフリーズやファイルクラッシュなど深刻な問題への対策が実施されています。すでにVer.6シリーズをお使いで、6.0.5までの従来バージョンを使用している方は、最新版への早急なアップグレードを推奨します。

一方、上記のフリーズ発生などを理由に、Ver.5シリーズからの変更を行っていない方は、もう少し様子を見ながら移行の検討を継続されたほうがいいかもしれません。

「混在使用はトラブル多発の要因になります」

筆者も業務内で毎週30時間前後はKiCADを使用していますが、先月からの完全新規案件はVer.6.0.5で対応し、それ以前の継続案件や改良案件用には別PCでVer.5.1.12を使用して対応していました。

なお、「両方起動するとVer.6が不安定になる」件については、最新バージョンでも改善は見られるものの、いまだ未解決であることを確認しています。どうしても両方使いたい場合には、PCごと分けることをオススメします。

リリースノートに目を通す限り、最新のバージョンアップにあたっての新機能はなく、「回路図エディタ」「PCBエディタ」で生じるフリーズ原因の解消とおよび併発する各種動作不良の改善が大半を占めています。

Windows及びmacOSプラットフォームへの対応が最優先されており、LinuxやそのほかのOS用バージョンへの対応は少々遅れる模様です。

Ver.6シリーズは、PCBエディタのデータインポート/エクスポートの機能充実や、細かい操作などできることが大幅に増えました。さらなる改良を続けていただき、より使いやすいツールとしてご提供いただけることを願っています。

※Ver.6.0.4、6.0.5から6.0.6へのバージョンアップに伴う問題と解決状況のリストは、公式サイト上のマイルストンページからご覧いただくことができます。

合わせて、アップデート内容の詳細についても、転載に伴う誤訳を避けるため、KiCADの公式サイトから別途確認をお願いいたします。

公式サイトへの寄付と海外の支援機関「CERN」

なお、皆様ご存じのとおり、KiCADはフリーウェアとして提供される体制を維持し続けるため、公式サイトから寄付の受付を行っています。

また、2013年頃から公式サイト上にて、KiCADの記事やダウンロードサーバーの設置個所などに「CERN」の文字を多数見かけるようになりました。

CERNとは、「Conseil Europeen pour la Recherche Nucleaire:欧州原子核物理学研究機構」の略称です。ヒッグス粒子の発見で全世界にその名を轟かせたのみならず、現在も全世界から結集した数千名の科学者が日夜研究に励んでいる国際研究機関です。

公式サイト:https://home.cern/

CERNには最先端の研究を実現するため、常に最新の実験機材を開発・設計するエンジニアが多数在籍しています。

そんな彼らがコストの制約を受けずに自由な設計ができ、機材のカスタマイズをいつでも何度でも行うことを可能にする最適な設計ツールとして、KiCADが採用されています。

この採用がきっかけになったのかどうかは定かでないものの、現在のKiCAD開発コミュニティには大規模ないくつかのチームが分業して行える体制となり、今回のVer.6シリーズのような大掛かりなバージョンアップも実現できる形になったといわれています。

しかし、CERNから得られるのはあくまでもサポートのみであり、公式コミュニティ上の開発は今まで通りユーザーと支援団体からの寄付で成り立っている状況には変わりありません。

クレジットカードの登録が必要になりますが、今後も改良と新機能の追加が継続されるために応援してもいただける方は、公式サイトの「寄付(Donate)」のリンクをクリックし、コミュニティへの応援もよろしくお願いいたします。

ABOUT KiCAD MASTER

KiCADの達人
KiCAD歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCADの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。