PCB設計前の準備:ボード設定とスタックアップの基礎
KiCadでPCB(プリント基板)の設計を始める前に、まずは設計の土台となるページ設定と「ボード構成の定義(スタックアップ)」を行いましょう。

本記事では、PCBエディターで設計を開始する際に設定しておきたい項目について解説します。
1. 図面情報の設定:ページサイズとタイトルブロック
最初に設計したデータを閲覧資料として利用する「設計図面」としての体裁を整えるために、以下の設定を行いましょう。
▶ 設定手順
- PCBエディターのメニューから
「ファイル」 → 「ページ設定…」 をクリック

- 開かれるダイアログで以下の情報を入力します
- 用紙サイズ(例:A4、A3など)
- タイトル
- 日付
- リビジョン(設計履歴管理に重要)

ポイント:設計変更を追跡しやすくするため、リビジョンや日付は必ず記載する習慣をつけましょう。
2. PCBの基本構成を定義:「基板の設定」メニューの活用
次に、プリント基板の製造方法や構造を設定します。
▶ 設定手順
- PCBエディターのメニューから
「ファイル」 → 「基板の設定…」 をクリック

- 開いたウィンドウでは、主に以下の設定を行います
- スタックアップ(レイヤー構成)
- 設計ルール(トラック幅、ビア間隔など)
3. 重要設定①:スタックアップの設定
「基板の設定」内の
「基板スタックアップ」 → 「物理スタックアップ」を開くと、PCBのレイヤー構成が設定できます。

▶ 主な設定ポイント
- デフォルトは両面基板(2層)
- KiCadは最大32層まで対応
- 実際の製造に合わせた、適切なレイヤー数に設定しましょう

⚠ 不要なレイヤーを残したままだと、設計チェックやDRC機能に支障が出ることがあります。
「予備レイヤーを追加しておく」ことを推奨する意見もありますが、設計ミス防止の観点では不要なレイヤーは削除がおすすめです。
4. 重要設定②:デザインルールとネットクラス
▼ デザインルール(制約)
- ダイヤログ:「デザインルール」 → 「制約」
- トラック幅やビアサイズ、クリアランスなどを全体で一括管理

PCB業者に製造を依頼する場合は、その業者の仕様に合わせた値への調整が必要です。
▼ ネットクラスの活用
- ダイヤログ:「デザインルール」 → 「ネットクラス」
- 特定のネット(信号線グループ)にルールを割り当て可能

決まった信号幅、クリアランスを指定したい配線グループ=ネットクラスごとに以下を設定できます:
- トラック幅
- 間隔(クリアランス)
- ビアサイズ
▶ 利用メリット
- 作業中の手動設定の手間を最小化
- 設計ルールに基づく自動チェックやツールのサポートが利用できる
- 高電流ライン、信号ライン、電源ライン等を分けて設定をすれば、設計がより楽に
5. 設計効率アップのために
KiCadでは、これらの設定を初期段階で整えておくことで、後の作業効率が大きく向上します。
- PCB製造の仕様に合った正確なレイヤー構成
- 明確な設計ルールと自動チェック
- ネットクラスによる配線制約の自動適用
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
ページ設定 | タイトル・日付・リビジョンを記入 |
スタックアップ | 実際の基板構成と合わせた層数に設定 |
設計ルール | PCB製造条件に合わせて調整 |
ネットクラス | 配線幅・クリアランスを自動管理 |
次回の記事では、実際の部品配置(アートワーク)と配線レイアウトのコツを紹介します。
設計作業に入る前の準備段階をしっかり整えて、効率的なPCB設計を始めましょう!
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