【KiCad ver.9】PCBエディター・スタックアップ設定チュートリアル

PCB設計前の準備:ボード設定とスタックアップの基礎

KiCadでPCB(プリント基板)の設計を始める前に、まずは設計の土台となるページ設定と「ボード構成の定義(スタックアップ)」を行いましょう。

本記事では、PCBエディターで設計を開始する際に設定しておきたい項目について解説します。


1. 図面情報の設定:ページサイズとタイトルブロック

最初に設計したデータを閲覧資料として利用する「設計図面」としての体裁を整えるために、以下の設定を行いましょう。

▶ 設定手順

  • PCBエディターのメニューから
     「ファイル」 → 「ページ設定…」 をクリック
  • 開かれるダイアログで以下の情報を入力します
     - 用紙サイズ(例:A4、A3など)
     - タイトル
     - 日付
     - リビジョン(設計履歴管理に重要)

ポイント:設計変更を追跡しやすくするため、リビジョンや日付は必ず記載する習慣をつけましょう。


2. PCBの基本構成を定義:「基板の設定」メニューの活用

次に、プリント基板の製造方法や構造を設定します。

▶ 設定手順

  • PCBエディターのメニューから
     「ファイル」 → 「基板の設定…」 をクリック
  • 開いたウィンドウでは、主に以下の設定を行います
     - スタックアップ(レイヤー構成)
     - 設計ルール(トラック幅、ビア間隔など)

3. 重要設定①:スタックアップの設定

「基板の設定」内の
「基板スタックアップ」 → 「物理スタックアップ」を開くと、PCBのレイヤー構成が設定できます。

▶ 主な設定ポイント

  • デフォルトは両面基板(2層)
  • KiCadは最大32層まで対応
  • 実際の製造に合わせた、適切なレイヤー数に設定しましょう

⚠ 不要なレイヤーを残したままだと、設計チェックやDRC機能に支障が出ることがあります。
「予備レイヤーを追加しておく」ことを推奨する意見もありますが、設計ミス防止の観点では不要なレイヤーは削除がおすすめです。


4. 重要設定②:デザインルールとネットクラス

▼ デザインルール(制約)

  • ダイヤログ:「デザインルール」 → 「制約」
  • トラック幅やビアサイズ、クリアランスなどを全体で一括管理

PCB業者に製造を依頼する場合は、その業者の仕様に合わせた値への調整が必要です。


▼ ネットクラスの活用

  • ダイヤログ:「デザインルール」 → 「ネットクラス」
  • 特定のネット(信号線グループ)にルールを割り当て可能

決まった信号幅、クリアランスを指定したい配線グループ=ネットクラスごとに以下を設定できます:

  • トラック幅
  • 間隔(クリアランス)
  • ビアサイズ

▶ 利用メリット

  • 作業中の手動設定の手間を最小化
  • 設計ルールに基づく自動チェックやツールのサポートが利用できる
  • 高電流ライン、信号ライン、電源ライン等を分けて設定をすれば、設計がより楽に

5. 設計効率アップのために

KiCadでは、これらの設定を初期段階で整えておくことで、後の作業効率が大きく向上します。

  • PCB製造の仕様に合った正確なレイヤー構成
  • 明確な設計ルールと自動チェック
  • ネットクラスによる配線制約の自動適用

まとめ

項目内容
ページ設定タイトル・日付・リビジョンを記入
スタックアップ実際の基板構成と合わせた層数に設定
設計ルールPCB製造条件に合わせて調整
ネットクラス配線幅・クリアランスを自動管理

次回の記事では、実際の部品配置(アートワーク)と配線レイアウトのコツを紹介します。
設計作業に入る前の準備段階をしっかり整えて、効率的なPCB設計を始めましょう!


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KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。