ホットキー(ショートカットキー)を活用したい

KiCadでホットキーを使用する

KiCadに限らず、電子回路設計に使用するEDAでは、複雑なPCB設計や回路図作成を効率化するために多数の操作が発生します。

ホットキー(ショートカットキー)は、特定の操作を素早く実行するためにキーボード上のキーを組み合わせてアプリケーションの操作を呼び出せる機能です。

通常はメニューを開いて選択を行ったり、アイコンをクリックして実行する操作を、ホットキーを使うことによってワンステップで行えるようになります。使用しているソフトウェアの機能に割り当てられているホットキーを覚え、的確に使いこなすことで作業効率が向上し、複雑なソフトウェアを迅速に操作できるようになります。

ホットキーのメリットはいくつかありますが、主にエンジニアの仕事として、効率よくかつ短時間に設計業務を遂行するといった場面において効果的です。

ホットキーは生産性向上のカギ

近年のアプリケーションは画面レイアウトが充実しており、多様な機能を利用できます。しかしその反面、表示されるメニューやアイコンが並んだツールバーは複雑なメニューを構成し、必要な機能を探す手間や、マウスでのクリックが何度も必要になる場合があります。

全てを覚えるのは無理だとしても、頻繁に使う操作のホットキーだけでも覚えておけば、作業中の操作を素早く行え、全体の作業時間短縮が期待できます。

KiCadでも各エディターごとに多様な機能がホットキー操作で行えるよう準備されています。

また、自分の好みに合わせてカスタマイズすることもできるため、個々の作業スタイルに合わせた設計環境を構築できます。

KiCadのホットキー設定を確認する

KiCadにおけるホットキー設定の様子を見てみましょう。

KiCadを起動し、プロジェクトマネージャーのメニューから「設定」-「設定」の順にクリックしてサブメニューを開きます。

左側のメニュー上部にある「ホットキー」の項目を選択すると、各アプリケーション毎に割り当て済み、または割り当て可能な機能の一覧を確認できます。

ホットキーが割り当てられていない機能にキーを設定したい場合は、その項目をダブルクリックして「ホットキーを設定」のサブウィンドウを開いてください。

サブウィンドウが開いた状態で、登録したいキー操作を実行します。その操作が割り当て可能であれば、ホットキーとして登録されます。

既に割り当て済のキー操作だった場合は、その旨を知らせるメッセージが表示されますので別の操作を試してみましょう。

そもそも「ホットキー」とは?

初期のホットキーは、UNIXやMS-DOSなどのコマンドラインインターフェースで採用された入力機能でした。この時代のホットキーは、「単純化されたコマンドの入力」として採用され、たとえばキーボードショートカットによるファイル操作やプログラムの起動などが主な使用目的でした。

WindowsやMac OSに代表されるオペレーティングシステム上で使用されるアプリケーションとともに、ホットキーは標準的な機能として採用されるようになりました。特に、Microsoft OfficeやAdobe製品など、業務で多用するうえに生産性が重視されるソフトウェアや、プログラマーやデザイナー向けの多機能なツールにおいてホットキーの利便性はその生産能力を左右する重要な要素となっています。

ホットキーは絶対覚えた方が良い?

以上に述べたように、ホットキーの主な目的は「操作の単純化による生産性の向上」です。

KiCadのように登場してから歴史が長いフリーウェアの場合、機能追加や操作性向上を目的としてGUIデザインや機能構成の刷新が行われることも多く、それに伴って使い慣れたメニューやアイコンのレイアウトが大幅に変更される場合があります。

ユーザーによっては、バージョンアップ後の新しい画面に慣れるまでの間は作業性が低下するという事態で困ったことがある人もいるでしょう。

そういう事態を回避するために、対策として「ホットキーの操作を覚えておく」という活用方法もあります。

ただし、必ずしもホットキーを覚える事がKiCadを使うために必要か?と聞かれれば、筆者は「No」と答えます。ホットキーをほとんど使わず、マウス操作や通常のキーボード操作だけでも十分に作業を進められるエンジニアもいます。

また、以下のような例においては、ホットキーは最低限の活用のみに留めた方がむしろ効率よく回路設計を進めることも可能になると思います。

なお、ここで述べる「効率」とは、業務等における生産性の良し悪しではなく、ストレスを感じず作業そのものを止める時間が少ない状態として考えています。

必ずしもホットキーを覚えなくても良い例

1)KiCadなどのツール初心者

初心者はまずKiCadの全体的な操作方法を理解することが優先されます。

まずは各エディター画面のツールバーやメニューから、機能の構成や基本的な操作を選ぶ方法をきちんと習得しましょう。システムに慣れる過程で視覚的な確認は重要となるため、ホットキーの学習は後回しにしても問題ありません。一通りの作業を実施できるようになり、ある程度操作に慣れて来た段階で、本人が必要とする機能に限定して活用できそうなホットキーから順番に覚えていくぐらいで良いでしょう。

2)小規模プロジェクト、単発設計が多いエンジニア

小規模なプロジェクトや単発の回路設計を行うケースが多いエンジニアの場合、ホットキーを多用して生産性を向上するよりも、操作を行いながら試行錯誤を繰り返すことの方が多い場合があります。こういうケースではツールバーやメニュー選択からの操作だけで十分に効率的な作業を行えるため、ホットキーについて必要性を感じないことがあります。

3)既にマウス作業に慣れてしまった人

長年に渡ってマウス操作による設計作業に慣れていて、ホットキーの使用頻度がほぼ無かったという人の例だと、ホットキーを無理に覚えようとさせることで逆に生産性が下がる場合があります。

もちろんこういう方の場合「ホットキーを覚えた事で劇的に生産性が向上する」というケースも充分に起こり得るのですが、闇雲にホットキーを使うことを強制せず、本人が慣れた方法で作業を継続して進める方が効率的だとも考えられます。

4)教育現場

教育目的でKiCadを教えるような場面では、先に述べたように初心者に対して分かり易くノウハウを伝える必要があるため、必然的にツールバーの表示やメニュー操作を意図して視覚的に盛り込んだ説明を行う場面が多くなります。

また、これから回路設計をはじめて学ぶ学生等を対象とした場合、回路図の書き方や設定項目に関連した専門知識といった、KiCadの操作方法以外の情報についてもその場で並行して講義する必要に対応しなければならないことから、あえてホットキーなど生産性向上を目的とした操作については講義から省略する事があります。

ホットキーを上手に活用して、ストレスないモノ作りをしよう

ホットキーの使用は、設計の効率化や精度向上に大いに役立ちますが、すべてのエンジニアが必ずしも必要とするわけではありません。作業の複雑さや個々のスキルレベルに応じて、ホットキーの使用を検討すればよいでしょう。

初心者やプロジェクトの内容によっては、ツールバーやメニュー操作だけで十分対応できるケースも多いです。

一方で、頻繁にPCB設計を行い生産性の向上を求められる企業に所属する中級・上級エンジニアの皆さんにおいては、ホットキーを活用して自身の設計スキルのブラッシュアップを目指すことは充分にお勧めできると思います。

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ABOUT US
KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。