標準ライブラリー以外の追加はいずれ必要になります
フリーウェアで回路構築からプリント基板の設計まで行う事が出来、標準で豊富なライブラリーを利用できるKiCadですが、より便利に活用するためには、世界中の電子部品に対応したライブラリーの追加が不可避となります。
今回はこういったライブラリーの追加について、公式ページで紹介されている各サービスについてみていきましょう。
KiCad公式サイトで紹介されているライブラリー
まず最初に、KiCad公式ページを開きます。上部のメニューから
「LIBRARIES」-「THIRD PARTY LIBRARIES」
の順に選択してクリックし、ページを開きます。
公式ページからは、5つのサービスについて紹介されています。
それぞれ目的や使い方によって得意、不得意がありますので、一つずつ見ていきましょう
「Digi-Key」提供の各種ライブラリー
本ブログでも何度も紹介しているDigi-Keyのライブラリーは、Github経由でダウンロードでき、シンボル及びフットプリントのライブラリーを追加できます。
大きな特徴としてはやはり、提供されるライブラリーでDigi-Keyで販売されているパーツの大半が網羅されていることが挙げられます。
特にさまざまな通信用コネクタや特殊なセンサーについては、シンボルの段階でコネクタや部品の形状等がイメージし易く描かれている物も多いため、回路図構築の段階から後工程をイメージし易いという特徴があります。
但し、Github上のデータ更新が4年前以降更新されていないため、最新のパーツに関して対応できていないと考えられる点は注意が必要です。
https://github.com/Digi-Key/digikey-kicad-library
2020年からの4年間なので、この時期は全世界のメーカーも色々大変な時期であったのは皆さんもご存じかと思います。今後更新が再開される可能性は充分に考えられますが、現時点ではやはり情報が古いと言わざるを得ません。
この点をデメリットとしても、差し引いても充分に豊富な電子部品のライブラリーを入手できるメリットの方が大きいサービスだと言えるでしょう。
「Octopart」提供のデータベース
Octopartは、電子部品の在庫・価格情報を簡単に検索・比較できるオンラインプラットフォームです。世界中の複数の電子部品供給業者と提携し、部品のスペック、価格、在庫状況、リードタイムなどを瞬時に確認できるサービスを提供しています。エンジニア、製造業者、研究者など、部品調達や設計に関わる多くのプロフェッショナルに利用されています。
基板用電子部品だけでなく、工具や計測装置、産業用機器についても調べることが可能で、さらに、メーカー別、販売業者別に調べることも可能です。
Octopart自体からライブラリーやCADデータをダウンロードすることはできませんが、「CADデータ」のリンクからデータ入手が可能な各種サービスを更に検索できるので、検索ページとしてブックマークしておくと良いでしょう。
「SparkFun」提供の製品ライブラリー
電子工作や簡単な実験に便利な、各種センサーや電子キットの開発・販売を行っている有名なメーカーです。こちらもGithub経由で、同社が提供している製品のシンボル、フットプリントを入手できます。
こちらは新製品の登場に合わせて頻繁に更新されている様子なので、SparkFunのパーツをメインで使用している方はこまめにチェックするようにしましょう。
今回は紹介しませんが、KiCadの各種管理画面から、Github上のファイルをライブラリーとして直接指定することも可能です。
利用はオンライン限定という制約を受けますが、上手く活用すると常に最新のデータを利用可能となりますので一度検討してみるのも良いかと思います。
「SnapEDA」提供のシンボル/フットプリントデータ
SnapEDAは、電子回路設計者向けの無料ライブラリプラットフォームで、シンボル、フットプリント、3DモデルといったPCB設計に必要な電子部品のデジタルリソースを提供しています。設計者が時間をかけて一から部品ライブラリーを作成する手間を省き、迅速に回路設計やPCBデザインを進めるために役立ちます。SnapEDAは、多くのCADツールと互換性があるため、プロジェクトに必要な部品データを簡単にインポートできるのも大きな特徴です。
SnapEDAは、多くのCADソフト(Altium、KiCad、Eagle、OrCAD、SolidWorksなど)に互換性のあるデータが用意されており、各CADに適した形式でデータをダウンロードできます。これにより、どの設計ソフトを使っていても、設計プロセスにスムーズに組み込むことが可能になります。
ただし、入手できるのはシンボル、フットプリント共に部品単位のデータが主であるため、KiCadで利用できるようにするためにはライブラリーに適時追加していく作業が必要になる点には注意しましょう。
「PCB Libraries」提供の各種データ
PCB Librariesは、電子設計の効率を上げるためのPCBフットプリント生成ツールおよびライブラリーを提供するプラットフォームです。
特に「Footprint Expert」というツールをアピールしており、IPC(国際電子工業会)標準に基づいたフットプリントを自動生成し、これによってPCB設計者は高品質なライブラリーを短時間で作成、設計プロセスの効率化に役立てることができるとされています。
さまざまなCADツールとの互換性、BOMとの連携機能など、多様な機能を備えており、電子設計の効率化を支援して設計者の作業負担を軽減できると言われていますが、正直なところ、筆者の周辺ではほぼ利用者がいないのでお勧めできるかどうかについてはもう少し評価してから考えたいツールではあります。
ライブラリーは無償/有償どちらも使い分けが大事
筆者の使い方を例に挙げるなら、KiCadのメジャーバージョンアップ後は回路図エディターのシンボル、プリント基板エディターのフットプリント共に「Digi-Key」「SparkFun」から入手したライブラリーを追加し、その後に「SnapEDA」のデータを追加する専用のライブラリーを新規設定、又は旧バージョンから引き継ぎするようにしています。
あくまで一例なので、この構成が正解!ということはありません。KiCadを利用される皆さんの環境や使いやすさによって多様な設定の仕方がありますので、色々工夫して使いやすい環境を構築するようにして下さい。
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