「P板.com」で電子機器の組立・生産のEMSサービスを利用できる!/「EMS」とOEM/ODMとは

今回の記事はKiCADの使い方から少し離れ、開発した機器を製品化、量産するときに重要なキーワードとなる「生産の外部委託」について触れていきます。

外部委託生産「OEM/ODM」とは

企業の生産効率を上げる手法や、ベンチャー企業等に多く見られる「ファブレス企業」が製品を量産する方法として、「外部委託生産」があります。これは、委託側と受託側それぞれの担当範囲の違いによって、大きく3種類(OEM/ODM/EMS)に分けられています。

まず、多くの技術者がもっともよく耳にする生産形態が「OEM(Original Equipment Manufacturing)」です。

委託生産の最も基本的な形態であり、委託側が製品の図面や設計を用意し、受託側は製造のみ請け負います。試作品などによって開発が完了し、生産だけを他社に委託する生産形態として、A社の製品をB社が生産し、A社が流通網で販売するスタイルです。

メリットとして、委託側は生産に必要な設備や人材の確保をする必要がなく、製品の開発や改良に集中することができる点が挙げられます。また、OEMの場合、生産数は都度調整することが多く、生産数のコントロールは委託側に主導権があることも特徴です。

ただし、委託側から生産品質やコストのコントロールが難しいこともあるため、受託側が製造ノウハウを吸収し、競合のOEM先となってしまうリスクなども存在します。

次に、スタートアップ企業などに適しているといわれる生産形態が「ODM(Original Design Manufacturing)」です。

ODMの場合、製品のデザインや設計まで受託側が受け持つこともあります。そのため、極端な話ですが、委託側は一切のノウハウや開発技術を持っていなくとも製品開発が可能になります。

一時期、ハードウェアのスタートアップ起業家の話題を多く耳にしたときには、こういったベンチャー企業の場合のほとんどがODM生産を利用していました。

ただし、ODMの場合には、前述した「ノウハウや技術がなくても開発が可能」というメリットが、一転して致命的なデメリットにつながることもあります。

ODMであっても、委託側にある程度の技術や知識は必要

ある時期、委託元が技術的なノウハウだけではなく流通や運用に必要な法基準などについても十分な知見を持たずにODM業者に生産を委託したケースが多発したことがありました。その結果、問題が未解決のまま流通した商品で問題が続発し、回収からそのまま販売停止になりました。

本ケースを振り返ってみると、委託側に十分な技術力や知見があれば予防できた事例ばかりであったことは疑いようがありません。

製品開発にODMを利用しようとする場合、必ずしも「受託側によって、技術的な認証や規制などに関する自主的な提案や対応がなされるとは限らない」というリスクがあることを忘れてはなりません。

また、OEM受託事業者は自社工場内で生産することが多いのに対して、ODMは受託事業者がその下に下請け工場をまとめて生産体制を整えることも多く見られます。委託/受託という形態よりも、開発パートナーのような関係を構築し強力な生産体制を確保した巨大ファブレス企業も存在します。

さらに、最近ではフリーランスのエンジニアが開発、試作や製造用データの用意を請け負うことも多く見られます。それにより、フリーランサーが委託側/受託側どちらの企業と契約しているかという点においても、OEM/ODMの境界が曖昧になってきている一面もあります。

電子機器委託生産に特化した「EMS」

OEM、ODMという生産形態は、自動車や家電などさまざまな製品に対しても適用される表現です。その中でも、電子機器の委託生産に特化した生産形態として「EMS(Electronics Manufacturing Service)」があります。

EMSはOEMやODMと何か違うのかと混同されることも多いですが、開発・生産までの流れや受託側の関わり方についてはODMとよく似ています。

EMS最大の特徴は、生産個数が委託側で都度コントロールされるのではなく、ほとんどの場合は契約に基づくロット生産が行われることが挙げられます。

また、EMSメーカーは、製造以外に流通過程においても担当する場合もあり、より相互に踏み込んだパートナー関係の構築も起こります。世界的な現状としては、大手EMSメーカーは台湾に集中しています。

高度なデジタル機器開発に応えるEMSではあるけれど・・・

デジタル技術の高性能化が著しい現在では、特定のEMSメーカーに開発を完全委託することで、開発人員のコストカットに舵を切る企業が続出しています。

開発技術保有の有無により、技術職の労働環境についても2極化が進んでいくことは、果たしてプラスとマイナスのどちらに働き得るのかという点には少々不安を感じています。

しかしながら、現代社会においては、このようにさまざまな生産方式があってはじめて全世界へ電子機器の供給を成立させることができているという事実は、知っておくに越したことはないでしょう。

P板.comでも利用できる「EMSサービス」

前置きが長くなりましたが、本ブログでも何度か紹介してきたP板.comにおいても、電子機器の組立・生産のEMSサービスを提供しています。

個人規模で電子機器を少数製作する場合でも、P板.comの各種サービスを駆使して実現することが可能です。しかし、スタートアップ企業を立ち上げた方や、副業あるいは新規事業として製品開発が必要になった企業の方々は、ぜひ一度ご相談されることをオススメします。

余談ですが、筆者自身もフルーランスのエンジニアとして、IoT機器の製品化に向けて企業様とP板様を仲介するお手伝いをしたことがあります。

P板.comはケーブル作成、筐体加工などの分野において、国内外に多数の提携工場で構築されたネットワークを保有しています。

ご相談にあたっては、普段の試作や少数製作時の時に用意する設計データを揃えてからであっても、ODM的な企画段階からであってもご相談に対応しています。

「基板を組み込むが、筐体加工の仕方がわからない」

「どんなケーブルを使えばいいか判断が難しい」

「このくらいの初歩的なレベルでは問い合わせできないよね…」とためらうことで開発が停滞するケースも多いと思いますが、P板.comのEMSサービスのお問い合わせ窓口を利用すると、初歩的な質問であってもとても丁寧に対応していただけます。

問い合わせフォームを眺めていると、「ロット生産がEMSの基本なのだから、学校法人から問い合わせはしないだろう」と思う方もいるかと思います。

しかし、実は最近の大学等の研究現場においては、IoTデバイスやロボット機器を開発するために、一度に数10個、場合によっては数100個のデバイスを製作することがあるのです。

その点においても、P板.comの製造委託サービスでは、一般的なロット生産はもちろん小規模ODM生産にあたる10台程度の少数生産にも対応しています。

CADやデジタル設計技術の進歩により、産業のみならずアカデミックな分野においても、P板.comが提供する委託生産サービスはその研究を支える大きな力となっているのです。

P板.comのWEBサイトには、EMSサービスの製造実績の例も紹介されています。IoTデバイスの企画・開発を検討中の事業者様は、ぜひ一度WEBサイトをご覧になってみてはいかがでしょうか。

ABOUT KiCAD MASTER

KiCADの達人
KiCAD歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCADの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。