プラグイン&コンテンツマネージャー
KiCadのプラグインマネージャーは、PCB設計に便利な機能を追加するためのプラグイン(拡張機能)を簡単に管理するツールです。プラグインマネージャーにより、ユーザーはさまざまな拡張機能を手軽にインストール・更新・削除できるようになり、カスタマイズ性の高い設計環境を実現できます。
今回はプラグインマネージャーで入手できる各種ライブラリーについて確認していきます。ライブラリーの種類が多いため、本記事では記事を2回に分け、前半6種類のライブラリーについて紹介します。
プラグインマネージャーの主な特徴
プラグインマネージャーを使用することで、ワンクリックでプラグインやライブラリー、各種コンテンツの手軽な追加が可能です。KiCadの公式チームによって確認されたサードパーティの開発者が提供するプラグインが入手できるようになっています。
画面上でプラグインの一覧や説明、バージョン情報などを確認できるため、設計に必要な機能を簡単に追加できます。なお、プラグインマネージャー上で最新バージョンの確認や過去データのロールバック等も行えるので、手軽にプラグインの更新を管理できます。
KiCadの標準機能には、回路図の接続チェック、3Dビューア、ドキュメント生成、プリント基板の設計上のエラーチェックなど、さまざまな目的に対応したものが用意されています。
たとえば、デザインルールチェック(DRC)や自動ルーティング支援、回路図のドキュメント化、BOM(部品表)の自動生成といった機能があり、設計効率を高められます。ここに更に特定の機能に特化したプラグインを組み合わせることで、プロジェクト要件や個々のユーザーに合わせた環境構築が可能になります。
現在もPythonScriptは使用可能
KiCadはオープンソースで開発されているため、プラグインを自作することが可能です。旧バージョンのKiCadでは誰でもプラグインを開発し公開することができました。
現バージョンでは原則として公式チームが確認したプラグインをまとめた、プラグインマネージャーで提供、共有されているツールの利用が推奨されていますが、現在でもPythonでスクリプトを記述することで、自身が使用している環境にカスタムプラグインを作成、追加する事は可能です。
これらの機能を活用することで、特定の設計要件や個別のワークフローに合わせた柔軟な拡張が可能です。
提供されている追加ライブラリーを確認する
プラグイン&コンテンツマネージャーで提供されているライブラリーは、2024年の段階で13種類が掲載されています。本機能がKiCadに実装されて以降、提供ライブラリーの数そのものはあまり増えていません。
また、開発チームに支援、資金提供等を行っている企業が公開しているパーツライブラリがマネージャー経由で提供されていないのも少々気になりますが、ここでは提供ライブラリーを順番に見て行きましょう。
「Keyswitch KiCad Library」
キーボード用キースイッチのシンボルを入手できるライブラリーです。
キースイッチそのものは、型番を調べれば各社の提供するライブラリーやデータサイトから入手できますが、このライブラリーはその中からキードーボ用スイッチに特化することで、世界的に愛好家の多い自作キーボード設計を支援してくれるライブラリーになっています。
パーツの追加ペースは若干緩やかではありますが、バージョン更新も定期的に行われているので用途が合致しているユーザーさんは追加しておくと便利です。
「Alternate KiCad Library」
Alternate(交替)とされているように、KiCad公式ライブラリーとの入れ替え利用を目標に、豊富なシンボル及びフットプリントが入手できるライブラリーになっています。
「最新の半導体に対応する」というよりも、「基本的な電子回路を分かりやすく構築する」ことを重視した、旧来のKiCadのアプローチを思い出させるデザインのシンボルが利用できます。
また、このライブラリーでは、シルクスクリーンの描画に特徴があります。半田付け部品用のフットプリントにおいて、シルクスクリーン上に回路記号が描かれているものが多く用意されており、特に実習用の教材や電子工作のキット開発に、便利に活用できます。
「4ms KiCad Library」
オーディオ機器のキットや部品販売を行う米国企業「4ms Company」が提供する、同社が提供する取り扱い部品を中心に編集したライブラリーになります。
オーディオ、映像系のパーツは通常の電子部品の販売企業が提供するライブラリーによる検索や、データシートの入手が独特であることが多く、Eurorack規格に基づいた音響、映像機器の設計開発を行うユーザーは追加しておくことで効率よく作業を進められます。
「Generic Symbol Library」
SPICEのシミュレーターで使いやすい、シンプルで汎用的に利用することを目的とした回路記号主体のライブラリーになります。
KiCadを使って教材用回路を作図したい人など、電子部品ごとの特徴ある作図についてはひとまず考えずに、基本的な回路を描きたい、という人は一度インストールしてご覧になることをお勧めします。但し、目的が基本的な記号の描画に特化していることと、初めて追加されて以降更新が進んでいないことから、利用は学習、シミュレーター主体にすることを推奨します。
「Elektuur Style Symbol Library」
先に結論を言ってしまえば、上記「Generic Symbol Library」を作成している方が作り直したライブラリー、と考えてもらってほぼ問題ないと思います。
推奨目的も学習、シミュレーター主体であることは変わりません。キーワードに登場している「Elektuur」という名称についてですが、簡単に紹介すると「海外版のトランジスタ技術(CQ出版)」とでもいうべき技術情報誌の、創刊当時の古い名称になります(現在は「Elektor」)。
海外版と簡単に言ってしまっていますが、現在でも世界50か国で月刊誌とWEBコミュニティを中心に展開されています。日本では提供が行われていないため推測にはなりますが、KiCadとの連携企画の一環で「Generic Symbol Library」を基に、作成者が再編集したデータに出版誌の名称を掲げて再登録されたのだろうと考えられます。更新バージョンもいくつか用意されていますが、実用的なプリント基板設計への使用が非推奨であることも変わらないので、用途限定での使用をお勧めします。
「openinput Library」
openinput Library は、Open CollectiveというWEBサービスが提供する各種ライブラリーになります。
Open Collectiveは、オープンソースプロジェクトやコミュニティ主導のイニシアチブ、草の根団体などが資金を集め、透明性を持って運用するためのプラットフォームを提供する組織です。特に非営利団体や営利法人でないプロジェクトに対して、財務管理や資金調達のサポートを行っている組織とされています。
入手できるライブラリーはそのデータ量もそこそこに豊富ですが、そのプロジェクトの性質や、最新の更新が数年前に停止していることなどを考慮すると、現時点なら、Digi-Key等が提供するライブラリーを利用する方を推奨したいと思います。
プラグインマネージャーからライブラリーをインストールしてみる
そして、最後に今回紹介している6種のライブラリーをプラグインマネージャーからインストールしてみましょう。
各ライブラリーの項目にある「インストール」ボタンをクリックしてから、プラグイン&コンテンツマネージャーの画面右下にある「保留中の変更を適用」ボタンを押します。
「インストール」ボタンを押しただけでは、ライブラリーの追加作業が実行されませんので注意して下さい。
この自動処理についてですが、どういう理由か判りませんが何度実行してもインストールに失敗する状態に陥る場合があります。記事を執筆しているタイミングでは運よく?何度か繰り返し実行してみるとほぼ全部のライブラリーを無事インストールできました。
ただ今回、「4ms KiCad Library」だけは一度アンインストールしてしまって以降、その後何度試してもマネージャーからのインストールに失敗し自動追加できませんでしたので手動追加にて対応しました。
プログラムの実行が確率の影響を受ける?のはなんだか不思議な気もしますが、フリーウェア特有のものと受け止めておく位の感覚でいて頂いた方が良いかと思います。
自動追加できなかったらGithub経由で個別追加しよう
自動インストールできなかったとしても、Github経由でデータを入手すれば、手動によるライブラリー追加は可能です。
今回自動インストールできたライブラリーについても「何回実行してもインストールできない」というお声を頂くこともありました。使ってみたいという方は自動インストールに失敗しても諦めずに、それぞれのGithubアドレスから別途ライブラリーファイルを入手して、インストール作業を別途行ってみてください。
それと同時に、開発チームは各ツールの自動処理について、実行精度向上の為のブラッシュアップにリソースを割いていただいた方が良いのではないか?と個人的には思っています。
別記事では後半の7種のライブラリーについても紹介していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願い致します。
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