ガーバーデータを活用する(ガーバービューワー)

「ガーバーデータを見る」以外にも使ってみよう

今回は質問頂きました内容をもとに、ガーバービューワーを使って製造データをもっと活用するノウハウについて、いくつかご紹介します。

「ガーバーデータ」は、プリント基板を製造するために必要なデータですが、設計作業を業務として進めて行くなかでは、事務処理や打合せ用のドキュメントに使用する画像データの用意が必要な場面に遭遇することがよくあります。こういった局面でガーバーデータをうまく利用できないか?と考えることも多いでしょう。

こういう場合、画像データを用意するのが理想的ですが、残念ながら現時点のKiCadでは、レイヤーに読み込んだデータから画像ファイルを生成、保存するコマンドは実装されていません。

作業の最後の一手が画面キャプチャーになってしまうのは惜しい気がしますし、プラグインの機能で何かあったようなうろ覚えの記憶もあったりしますが、今回は筆者も良く使っている、ガーバービューワー単体でできる方法や、プリント基板エディターにエクスポートしてからできる方法などについてご紹介したいと思います。

記事の後半では、他の2D-CADで編集するためのDXFデータ生成についても解説しました。実際の業務で、機能を限定したツールとしてKiCadを利用したいという方も参考にして頂ければと思います。

スタートはガーバービューワーにデータを読み込むことから

最初に、取り込みたいプリント基板のガーバーデータを、ガーバービューワーに読み込みます。

このガーバービューワーのメニューに「計測ツール」があります。

ですが、このツールで測定できるのは「ビューワーのグリッド間の距離」だけです。グリッド設定を細かくすればそれに比例した精度で距離や直径を測ることはできると思いますが、パッドや配線、基板外形の寸法を正確に測定するのは難しいと言わざるを得ません。

ここではあくまでおおまかな寸法が測定できる、という認識でいた方が良いでしょう。

PDF化を利用してレイヤーの画像を用意する

また、読み込んだデータで描かれた形状を図形や画像として利用するためには、「印刷」メニューを利用します。

メニューをクリックすると現れるサブメニューの項目から、印刷したいレイヤーを選択し、必要に応じて出力モード、反転の有無などを選択してください。

このとき、特に問題が無ければ、どのレイヤーを印刷する際にも「基板外形=Edge_Cuts.gbr」のレイヤーはチェックを入れたまま一緒に印刷することをお勧めします。

印刷プレビューで確認したら、印刷ボタンからWindowsの場合は標準で搭載されているPDFに出力するツールを選択してPDF化します。

このPDF化されたファイルから、必要な部分を画面キャプチャーするなどして画像データ化、ドキュメント内の図形画像として利用できます。

ガーバービューワーからレイヤーの画像を抽出する方法としては、これが一番シンプルだと思いますが、この方法では抽出した画像をもとに、更なる編集を加えるような使い方ができません。

編集作業に使うデータが欲しいなら、プリント基板エディターへ出力

もう少し踏み込んだ編集が可能なデータとして活用するためには、一度PCBエディターのファイルに変換する必要があります。

ガーバービューワーのメニューから「PCBエディターへエクスポート」を選択して、PCBエディターの編集ファイルを生成しましょう。

この時、ガーバービューワーを何か任意のプロジェクトで開いている場合、そのプロジェクトで使用中のPCBエディターファイルに上書きしてしまわないように注意して下さい。

できれば、編集作業用のプロジェクトファイルを作成しておき、その中でデータの読み込み、エクスポート処理等を行うことをお勧めします。

プリント基板エディターにエクスポートしたガーバーデータは、各レイヤー上に「図形データ」として変換されています。

四角や多角形の形状はすべてポリゴンとして図形化されているため、ガーバービューワーのときと同様に「計測」ツールを使用しても、今度は図形の角や端を選択できるようになっています。

計測ツールによる寸法表示は、測定点間の最短距離を半径=rとして表示し、そこまでの水平距離、垂直距離をそれぞれX、Y距離として表示しています。

一般的なCADの寸法ツールと表記の仕方が異なり違和感を感じる方もいるかもしれませんが、必要な情報は読み解けるようになっていますので問題なく利用できます。

また、パッドに多い「丸」図形についてはそのまま丸としてプリント基板エディターに読み込まれていますので、プロパティを開けば座標上の位置と半径を確認することが可能です。

PDF化と「DXF化」を使いこなそう

プリント基板エディターの「印刷」メニューからも、先ほどのガーバーデータをPDF化したのと同じ手順でレイヤーをPDF画像に出力することが可能です。

ですが、できればKiCad以外の編集ソフトを使ってここから更に図形として編集したい、という方もいらっしゃると思います。

そういう場合には、基板エディターからガーバーデータを生成するために使用する「プロット」メニューを利用します。このプロットメニューからはガーバーデータ以外のCADデータを出力できます。

とはいってもCADデータの種類が豊富というわけではなく、レイヤーの描画=2Dデータの生成をすることになります。プロットメニューからは2D-CADのデータとして代表的な「DXF」ファイルを出力できるようになっています。

プロットメニューから出力フォーマットを「DXF」とし、「含めるレイヤー」から出力したいレイヤーにチェックを入れます。

ここで、先ほどのPDF出力の時と同様に編集の基準となる外形の形状を一緒に出力したいので、「全てのレイヤーでプロットする」のリストから「Edge.Cuts」にチェックを入れておきます。

さらに、編集用にドリル穴の位置情報も組み込んでおきたい場合には、ドリルマークの項目を変更します。特に出力後にCAD編集をするのであれば、ドリルマークの項目は「実際の大きさ」を選んでおいた方が、手戻りが減ると思います。

最後にDXFオプションの項目より

「外形線を使用してグラフィックアイテムをプロット」

のチェックを外してください。

この項目のチェックを外すことで、描かれたデータ通りの寸法のDXFデータを出力できます。「エクスポート単位」の項目についても必要に応じて変更を行ってください。

もしこの項目のチェックが入ったままDXFを出力した場合、データは本来の寸法で描かれた直線を中心線とした2本の平行線に置き換えられて出力されます。

この状態では本来の線を示すデータは生成されません。のちに編集するデータとして利用する場合、作業が非常に煩雑なものになることが予想されますので注意して下さい。

以上のような手順で、任意のガーバーデータからKiCad用の編集ファイルを経由し、外部での資料用画像やさらなる設計、編集に利用するデータの作成を行うことが可能になります。

特にDXF化できてしまえば、イラストツールや他の描画系ソフトウェアで編集することが容易になります。

即実現できる機能が無い?だったら組合せて使おう!

多機能なEDAツールをあえて「道具として」機能を絞った使い方をするのは決して無駄なことではありません。さまざまな用途に対して柔軟な使い方ができることも、クリエイティブな設計、開発ツールにとって大切な要素ですので、皆さんもどうぞいろいろな活用法を編み出してみて下さい。

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ABOUT US
KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。