プラグインを使いこなそう
KiCadで設計したプリント基板データを使用すれば、国内外の沢山の業者に製造を外注できます。
現在はWEBサイトで必要な情報を入力するだけで簡単に見積、発注が出来るサービスが多数存在しています。これによって手軽かつ安価に、誰でもプリント基板を製造できるようになりました。その結果としてKiCadも含む各種EDAを使用するユーザーが世界中で劇的に増えたのは言うまでもないことでしょう。
設計後の発注作業を可能な限り簡単にすることが製造業者にとっては顧客獲得の重要課題となり、その方法の一つとして、各社が見積登録を自動化するための追加プログラム「プラグイン」をKiCad用に作成、提供しています。
今回はこのプラグインを導入して、プリント基板製造サービスをより手軽に利用する手順について紹介していきたいと思います。
プリント基板と周辺パーツまで製造できる「PCBWay」
多数存在するプリント基板製造サービスの中から、今回は「PCBWay」を例に挙げて進めていきます。

通常のプリント基板製造だけではなく、3Dプリントやパネル加工、OEM生産といった様々な追加サービスを提供しているPCBWayは、特に最近利用者が急増している企業です。
また、継続的なリピート発注や1000枚/ロットを超える量産等においても、法人個人を問わず対応してもらえるのが強みです。

その代わり、国際物流ルートで届きますので、実際に手元に届くには数日を要することだけが勿体ない点ではあります。まあ届くまでを楽しみに待つ余裕も大事、ということで。
KiCadにプラグインを追加する
PCBWayのWEBサイトにも、分かりやすい自動見積ページが用意されていますが、今回はKiCadのプラグインを利用する方法で進めていきます。
KiCadを起動し、管理画面の下部から「プラグイン&コンテンツマネージャー」を起動します。


「プラグイン」タブを選択し、フィルターの欄に「PCBWay」と入力して該当するプラグインを検索します。
すると該当するプラグインが複数見つかりました。

PCBWayが提供しているプラグインは、検索結果の上2つになります。解説を読んでいる限り、どちらも基本的には同じ処理を行うプログラムに見えます。ですが、下段の「PCBWay function Toolkit」と記載されているプラグインは、現在のバージョン8では正常動作しないことを確認しています。
したがって、ここでは「PCBWay Plug-in for KiCad」という名前のファイルのみをインストールします。
プラグインの「インストール」ボタンを押した後、画面右下の「保留中の変更を適用」ボタンを押してインストールを実行して下さい。

インストールが終わったら、発注したいプロジェクトを読み込んでプリント基板エディターを開きます。
発注プラグインはほぼワンアクションで簡単
今回は、過去に設計したArduino互換ボードのデータを使っています。

画面上部のアイコンが並んでいる列の右端に、今回インストールしたプラグインのアイコンが追加されています。
通常、プリント基板を外注するためにはガーバーデータ、位置情報ファイル(ポジションデータ)の生成が必要になります。

データ生成の際、必要なレイヤーがうっかり選択から漏れたり、オプション設定が適切に行われないなどの原因が影響して、設計者の意図したとおりに製造が行えないことがあります。
今回追加したプラグインを利用することで、こういったデータ生成を自動化して製造用データの準備ミスを減らすことができるようになっています。
では、PCBWayのサービスで見積を作るため、プラグインのアイコンをクリックしてみましょう。

アイコンをクリックすると、インストールされたプログラムが必要なデータを自動生成、PCBWayのWEBサイトを開いてデータが自動アップロードされます。

一見普通にWEBサイトを開いた時と変わりがないように見えますが、プラグインの処理が行われた結果、
「製造に必要なガーバーデータ」
「プリント基板エディターから生成されたBOMリスト」
「自動採寸された基板寸法」
「基板設定で指定された導体層数」

以上の4項目が自動的に登録されます。
唯一惜しいのが「基板の厚み」

標準的な1.6mm厚基板を作る上では問題ありませんが、薄厚や1.6mmを超える厚板基板をプリント基板エディターで設定していたとしても、この記事を書いている時点ではここだけは自動反映できませんでした。
この板厚が設定から反映できるようになれば、本当にワンクリックでPCBWayへの見積データを漏らさず登録可能になるので、是非プラグインの改良をお願いしたい所です。
残りの細かい項目や、部品実装を伴う発注の場合はここから色々な設定やファイルの準備が必要になりますが、プリント基板のみを製造する場合であれば、プラグインのアイコンを1クリックするだけでほぼ自動的に見積算出までを実行できました。
見積金額も計算され画面右側に表示されていますので、はんだ付け専用のプリント基板の設計・製造で良ければ、KiCadの画面上で設計をするだけで、あっという間に発注まで行える非常に便利な機能として利用できます。
便利な機能だけど少しだけ注意も必要
今回のプラグインを利用することでほぼワンアクションでプリント基板製造の見積を確認することができます。ただし、利用上の注意点としては現状では2つの項目が挙げられます。
「プリント基板エディターの基板設定メニューの一部は自動反映できない」
自動処理を過信せず、WEBサイトに反映された各項目は一通り目を通して確認するようにしましょう。
「自動処理で生成されるBOMはフットプリントの情報を基にした内容のみ」
これは普段の製造用データ作成手順でも同じですが、部品実装の購入を伴う製造発注を行うのであれば、生成されたBOMに電子部品の型式や規格、製造メーカーといった、部材の購入に必要な情報を追記したファイルを用意する必要があります。
これらに注意しながら、回路設計の効率化に活用して頂ければと思います。
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