今回の記事では、プリント基板製造サービス「プリント基板センターPB」を利用する際の手順について解説します。
「プリント基板センターPB」の運営会社は、プリント基板の製造、回路開発を主業務とする株式会社東和テック様です。
国内では珍しい「製造企業が直接運営するWEBサービス」
少し意外に思われるかもしれませんが、国内のプリント基板試作・製造サービスを運営している企業の場合、その大半は全国に点在する製造業者と業務提携し、顧客からのデータ編集と案件管理を主業務とした管理会社と下請け企業に近い関係構築をすることが多いです。
日本国内での試作・少数製造の分野においては、海外企業と比較すると案件の絶対量が少なくなります。そのため、国内のプリント基板試作・製造サービスを運営している企業は、製造工場を有する国内企業の単独運営でのサービス維持に関して経営面での難易度が高い中で奮闘されています。
そのぶん、サービスを直線運営している場合、設計製造から品質管理まで社内で一貫できる体制をフル活用した、高品質なプリント基板製造が叶えられる強みがあります。
「株式会社東和テック」では、プリント基板の製造のみならず、プロジェクトへの技術者派遣または設計請負、海外企業と提携する形で内部ソフトウェアの開発まで対応しています。
個人開発や小規模な試作であれば「プリント基板センターPB」の製造サービスを利用し、副業や中規模以上の生産案件などは「株式会社東和テック」に問い合わせるという二段構えの体制で対応していただけます。
さらに、国内企業のサービスとしては珍しい「プリント基板センターPB」の特徴として、海外企業の製造サービスではよく見かける「利用によるポイントサービス」が提供されています。
「オンライン見積りサービス」を利用する
それではここからは、個人/小規模向け製造サービスである「プリント基板センターPB」のWEBサイトにて、PWB製造の手順について進めていきたいと思います。
まず、表示されたトップページの左側にある「オンライン見積」のボタンを押し、見積り情報の入力ページに移動します。
なお、「プリント基板センターPB」のWEBサイトにおいては、会員登録をせずとも見積計算はできますが、計算結果を保存しておくためには会員登録が必要になります。
上記画像の自動見積の情報登録画面が開いたら、上から順番に必要項目を入力していきます。
まずはじめに、「製造コース」と「基板サイズ」を指定します。
コースは「試作」か「リピート」の選択式となっており、層数は片面~最大8層までの中から選択します。基板サイズと製作枚数は該当する数値を入力してください。
基板サイズと製造数量が決まった後は、PWBの仕様を入力していきます。
PWBの素材と板厚、表面の仕上がりを決めるレジスト色などを選択します。
基材は、「FR4(ガラスエポキシ)」「FR1(紙フェノール)」「High Tg材(Tg180 FR-4)」の3種類から選択します。
板厚は、1.6mmの標準仕様、0.4mmまでの極薄板から3.2mmの厚板各種から選択します。
表面処理は、パッド露出部分や端子部分の処理を選択します。基板端面に端子がある場合の金メッキ処理などもこちらで選択します。
同様に、レジスト/シルクスクリーンの塗布面と色も選択しましょう。プリント基板センターPBのサービスで選択できるレジスト色は「緑・赤・青・黄・白・黒」の6色からの選択式になっています。
「面付けの選択」は他社とは異なる表現に注意
続けて、製造上の加工処理について仕様を決めていきます。
面付けはデータ通りの「無し(標準)」から20面まで選択することができます。注意書きにも記載されていますが、異種面付けを行う場合は選択が10面までになることをご注意ください。
ミシン目、ルーターが設計したデータにある場合は、それぞれの項目から面付けされている面数で選択します。他社ではVカットやルーターは直線の本数での指定が多いため、ここは注意が必要です。
部品面、半田面の導体層厚みは「35μm(標準)」と18μmと70μmの3種類から選択します。
さらに、アップロードするガーバーデータの書式を選択します。標準で拡張ガーバーが選択されており、KiCadの出力データで問題はないようです。
PWBと同時に「メタルマスクの製造」も依頼できる
選択項目の終盤には、メタルマスクの製造有無や配線幅の仕様について選択します。
PWBを製造後は部品実装にリフロー処理をするため、はんだペーストを塗る場合があります。この作業の効率化のために使用するのが、「メタルマスク」と呼ばれる薄い金属板に穴が開いた治具です。
PWB製造時に合わせてメタルマスク製作を希望する場合は、選択肢から希望するタイプを選びましょう。
パターン幅、穴径、ランド径の最小値の項目は、必要に応じて数値を入力して変更します。
なお、KiCadのプリント基板エディターで標準設定から変更を行わずに使用している場合には、これらの項目は変更不要です。
ここまでの選択項目の設定完了後、PWB製造の費用見積りの計算ができます。しかし、続く自動見積のページには選択項目が残っているため、以降で解説します。
「PWB設計依頼」も同時に行える
この区分は「回路図までは描かれていて、PWBの設計込みで依頼したい」場合に選択、入力する項目になっています。
KiCadの回路図エディターで回路の描画は終わっており、手動操作でネットリストの書き出しができていれば、PWB上の回路設計からPWB製造までを一括して見積り依頼することができます。
必要項目をすべて選択、入力後に「計算」ボタンを押します。
ボタンを押すと画面が切り替わり、製造コースごとに自動計算された見積り金額が表示されます。
金額の確認後は、会員登録したマイページからガーバーデータをアップロードすることで発注ができます。
ガーバーデータとPOSデータ、送付するガーバーファイルの名称リストを用意しましょう。PWBの仕上がり確認のため、外観寸法図も用意します。
KiCadの場合には、プリント基板エディターで外形寸法をUSERレイヤーなどに入力して、実装手配時と同じ要領で外形図をPDF出力して利用することが出来ます。
基板製造用データの送付時は、LZHまたはZIP形式の圧縮ファイルなど、1つにまとめてアップロードできるものを準備します。
ここではKiCadを使い、PWB設計も同時に依頼する場合に用意する「ネットリスト」を準備します。
回路図エディターから、「ファイル」-「エクスポート」―「ネットリスト」の順で選択して出力ウィンドウを開きます。
「ネットリスト」は標準のKiCadフォーマット以外にも、OrcadPCB2フォーマット、CadStarフォーマットも選択できます。
ただし、PWB設計まで依頼する場合、ネットリストの内容確認のため業者様とのやり取りがそれなりの頻度で発生します。このとき、使い慣れているKiCadのフォーマットから変換したネットリストを送ると、内容確認の手間が二重三重に増えることがありますので注意しましょう。
スタートアップや創業での製造に適した「プリント基板センターPB」
「プリント基板センターPB」は国内製造業者による直接運営であるため、プリント基板の仕上がりは申し分ないクオリティです。
少量製作の価格面においては、どうしても海外の格安サービスと比べられると厳しい面はありますが、それでも試作後の生産、量産への移行などもスムーズに対応可能な点は国内企業によるサービスの強みです。
スタートアップや副業における製造場面において、時差のない安定したコミュニケーションや製造用の調達部品の直接送付など国内企業ならではのメリットを受けながら、「プリント基板センターPB」をパートナーにしたビジネスに挑戦してみてはいかがでしょうか?
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