KiCAD支援体制:CERNの場合

今回はいつもと少し切り口を変えて、実用的なご紹介ではなくちょっとした雑学の話になります。

「CERN」って何?

CERN(欧州原子核研究機構)は、スイスとフランスの国境にある、世界最大級の高エネルギー物理学研究機関です。1954年に設立され、加速器や検出器を使用して、素粒子物理学の研究を行っています。

CERNは、加速器の中で原子核や素粒子を高速で衝突させることにより、宇宙の大きな謎を解明することを目指しています。

その中でも、特に広く知られているのは、2012年に発表されたヒッグス粒子(ブリオン・ヒッグス粒子)の発見と更なる検証のストーリーでしょう。

参考:東京大学素粒子物理国際研究センター「ヒッグス粒子の発見」

CERNは、多くの国際的な科学者が集まる場所であり、世界中から多くの研究者が参加している研究施設です。また、CERNでは科学技術の発展に貢献することを目的とし、オープンデータやオープンソースのプロジェクトの利用を積極的に推進しています。

歴史の長いKiCADとCERNの関係

KiCADとCERNには、密接な関係があります。CERNは、高エネルギー物理学の研究施設であり、オープンソースのEDA(電子設計自動化)ツールを使用しています。

そのため、CERNは機関の取り組みとしてEDAツールのオープンソース化を推進しており、代表的なソフトウェアとしてKiCADの開発をサポートしています。

オープンソースのメリットとデメリット

オープンデータやオープンソースの利用については以下に挙げる様なメリットやデメリットがあります。それらを理解した上で適切な利用をする事が必要です。

【メリット】

〇 透明性が高く、信頼性が高いデータやソフトウェアを利用できると言われている。

〇 データやソフトウェアの改善や開発が、多くの人々によって共有される事で効率的に行う事が出来る。

〇 他の人々と共同で開発する事で多様な視点やアイデアが生まれ、創造性を高める事が出来る。

〇 同一の開発環境を使用する人員を容易に増やせる事により、開発コストが削減される。

〇 利用者が自由に改変や再利用ができる為、研究や開発のスピード向上に貢献できる。

【デメリット】

● 利用者の拡大が容易な為、規模の拡大に情報セキュリティの強化が追い付かないリスクが生じる場合がある。

● データやソフトウェアの利用に対して、利用者の知識や技術力によっては活用が困難な場合がある。

● 多くの人々によって並行した開発が行われる為、研究方針や開発のマネジメントが難しくなる場合がある。

● オープンソースのプログラムの場合、ビジネス的な利益を上げる事に制約が生じる場合がある。

以上のように、オープンデータやオープンソースの利用には多くのメリットがありますが、同時にデメリットも一定数存在します。利用者は、利用目的や目的に対して適したデータやソフトウェアを選択することが重要です。

オープンソースEDAは今後も拡大していく

KiCADは、CERN内部の回路技術者が使用しているEDAツールであり、これまでにもCERNが開発した多くのプロトタイプ基板の設計に貢献してきました。

現在でもCERNは、LHC(大型ハドロン衝突型加速器)の制御システムやATLAS(大型ハドロン衝突型加速器の一つ)のトラッカーの設計など、重要なプロジェクトの為の制御基板開発にKiCADを利用しています。

今回は一つの研究機関のKiCADに対する支援体制や利用例についてお話しました。

他にも世界中の部品メーカーや基板製造業者、学術的な研究機関等がオープンソースのEDAツールの普及を推進し、電子回路設計の研究や産業分野の発展に貢献出来る事を願ってKiCADプロジェクトを支援しています。

皆さんも使用していて感じた操作感や発見した問題点を送信する等のフィードバックで、KiCADの発展に是非力をお貸しください。

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ABOUT US
KiCADの達人
KiCAD歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCADの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。