プリント基板(PCB)の構造と製造に必要なデータの種類(後編)

KiCadでプリント基板の製造データを用意する

本記事の前編では、プリント基板の構造を解説し、製造に必要なデータファイルの種類について確認しました。今回は、以下のデータをKiCadを使用してどのように出力するのかについて解説します。

必要な製造データ

  • ガーバーデータ(Gerber Data)
  • ネットリスト(Netlist)
  • 部品配置データ(Centroid / Pick and Place Data)
  • ドリルデータ(Drill File / NC Drill Data)
  • 機械加工データ(Mechanical Drawing)

KiCadは回路描画からプリント基板の設計まで行えるフリーウェアのEDAツールであり、これらの製造データを出力する機能を備えています。

KiCadでの製造データ出力手順

1. ガーバーデータ(Gerber Data)

  • PCBエディターのメニューから「製造用出力」→「プロット」を選択。
  • 出力フォーマットをGerberに設定し、出力ディレクトリを指定。
  • 「含めるレイヤー」リストから以下のレイヤーを選択。
    • 銅箔パターン(拡張子 .Cu
    • ソルダーマスク(拡張子 .MASK
    • シルクスクリーン(拡張子 .Silkscreen
    • 基板外形データEdge.Cuts レイヤー)
  • 追加の推奨レイヤー(製造効率向上のため)
    • 部品実装用ボンド位置.Adhesive
    • はんだペースト用メタルマスク.Paste

レイヤー選択後、「プロット」ボタンを押してGerberファイルを生成します。

2. ネットリスト(Netlist)

  • 回路図エディターを開く。
  • メニューの「ファイル」→「エクスポート」→「ネットリスト」を選択し、保存して下さい。

3. 部品配置データ(Centroid / Pick and Place Data)

  • PCBエディターの「製造用出力」メニューから「部品配置ファイル」を選択。
  • 出力先のディレクトリを指定し、ファイルを生成。

4. ドリルデータ(Drill File / NC Drill Data)

  • ガーバーデータを生成するウィンドウの右下にある「ドリルファイルを生成」ボタンをクリック。
  • 出力先を指定し、必要なオプションを選択後、「生成」ボタンを押す。
  • KiCad Ver.9では「マップファイルの生成」がオプション項目として統合されているため、必要に応じてチェックをONにしてから生成。

5. 機械加工データ(Mechanical Drawing)

  • DXF形式での出力が必要な場合
    • ガーバーデータの出力ウィンドウで「DXF」を選択。
    • 「Edge.Cuts」レイヤーのみを選択。
    • 「外形線を使用してグラフィックアイテムをプロット」のチェックを外して生成。

まとめ

PCBの製造には、「ガーバーデータ」や「ドリルデータ」などの設計データが必要です。

基板構造には単層、両面、多層基板があり、それぞれ導体層、絶縁層、シルクスクリーンなどの要素で構成されています。設計ツール(KiCad、Eagle、Altium Designerなど)から適切なデータを出力し、製造業者に提供することが基板製造を効率よく、高品質に実行する上で重要です。

KiCadを活用すれば、製造データを簡単に作成できます。回路設計に取り組んでいる方は、ぜひご自身の手で製造用データの生成まで試してみてください。

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KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。