プリント基板(PCB)の構造と製造に必要なデータの種類(前編)

プリント基板の構造と製造用データ

電子機器の開発において不可欠なプリント基板(PCB)。本記事では、PCBの基本構造と、製造に必要なデータの種類について解説します。


1. プリント基板(PCB)の構造

PCBは電子回路を構成するために必要な導電パターンが形成された複合素材で作られています。一般的なPCBの構造は以下の通りです。

1.1 基本構造

  • 単層基板(Single Layer PCB)
    • 片面にのみ導体パターンが形成されている基板。シンプルで低コスト。
  • 両面基板(Double Layer PCB)
    • 基板の両面に導体パターンがあり、スルーホール(VIA)で電気的に接続。
  • 多層基板(Multilayer PCB)
    • 3層以上の銅箔層を積層した基板。高密度実装に適しています。

1.2 各層の構成要素

  • 基材(Substrate)
    • PCBの土台となる部分。FR-4(ガラス繊維とエポキシ樹脂)やポリイミドなどが使用されます。
  • 導体層(Copper Layer)
    • 電流を流す銅箔層。エッチング加工により回路パターンを形成。
  • 絶縁層(Dielectric Layer)
    • 電気的な絶縁を行う層。多層基板では層間絶縁の役割も担います。
  • シルクスクリーン(Silkscreen)
    • 部品番号やマークを印刷する層。通常は白色ですが、他の色も選択可能。
  • ソルダーマスク(Solder Mask)
    • はんだ付け不要な部分を覆う絶縁層。一般的には緑色ですが、多様な色が利用可能。
  • スルーホール(Via)
    • 異なる層を接続する導電性の穴。種類として貫通ビア(Through-Hole)、ブラインドビア(Blind Via)、埋め込みビア(Buried Via)があります。

2. PCBの製造に必要なデータの種類

PCBの製造には、設計データを出力し工場へ渡す必要があります。主なデータ形式は以下の通りです。

2.1 ガーバーデータ(Gerber Data)

PCB製造の標準フォーマットで、各レイヤーの設計情報を含みます。

  • 銅箔パターン(Top/Bottom Copper)
  • ソルダーマスク(Top/Bottom Solder Mask)
  • シルクスクリーン(Top/Bottom Silkscreen)
  • ドリルデータ(Drill File / Excellon Format)
  • 基板外形データ(Board Outline)

2.2 ネットリスト(Netlist)

回路の電気的接続情報を示すデータ。設計検査や製造後の電気的検査に使用されます。

2.3 部品配置データ(Centroid / Pick and Place Data)

部品実装時に必要なデータで、各部品の配置座標や回転角度が記載されています。フォーマットはCSVやテキスト形式が一般的です。

2.4 ドリルデータ(Drill File / NC Drill Data)

穴あけ加工のためのデータ。スルーホールやビアのサイズ、位置情報を含みます。

2.5 機械加工データ(Mechanical Drawing)

基板の外形寸法や切削加工、Vカット、ネジ穴の情報を示すデータ。DXFなどの機械CADフォーマットで提供されることがあります。

次回の記事では、これらのデータをどのように準備し、実際の製造工程へとつなげるのかを解説します。

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KiCadの達人
KiCad歴15年程度。雑誌記事や教育用テキストの執筆経験等複数あり。私大電気電子工学科での指導とフリーランスエンジニアを兼業しながらFab施設の機器インストラクターや企業セミナー講師を歴任し、KiCadの普及と現代の働き方に対応した技術者育成に務める。